特に意識して水分出納(in-out)を確認すべき状況や病態とは?今回は体液が乱れる状況の1つ、溢水を取り上げます。溢水のサインや観察ポイント、薬剤や輸液による対応について解説します。

「in-out(水分出納)をみるのはこんなとき!」の連載まとめはこちら

溢水(in>out)
関連する病態
心不全
●肺水腫
●むくみ など

溢水の状態

溢水とは?

 溢水とは、水分過剰状態を意味します。例えば心不全では、静脈血が心臓に戻れなくなって静脈内に留まり、静脈圧が上昇します。すると末梢の静水圧(静止した水中ではたらく圧力)が上昇し、膠質浸透圧*2を超えることで、循環血漿量の維持・調節を行っているアルブミン(Alb)のはたらきを低下させます。

 これにより、血漿から間質へ水が移動し、間質液が増え、浮腫や体腔液貯留を起こすことになります。このようにして体液量が過剰な状態になっていきます。

*1【膠質浸透圧】=血管内を流れる血液内の浸透圧の1つ。赤血球、白血球、血小板を除いた血液中の液体成分である、血漿中に溶けているアルブミンを中心とした浸透圧を指す。

ベッドサイドで注意したい溢水のサイン

水分の漏出による浮腫:全身性浮腫、下部・末梢で顕著

 浮腫は、血管外に水分が漏れて細胞間質に貯留することで起こります(図1)。体液過剰や心不全などによる“静脈のうっ滞”に伴う浮腫は、静脈圧の上昇により、還流が阻害されることで形成される浮腫です。全身の水分増加によるものであるため、浮腫は全身性に認められます。なお水分は重力に依存するので下になっている部分に貯留しやすく、また圧が低いところに流れていくので、組織圧が低い末梢に貯留する傾向にあります。

図1 浮腫のイメージ

浮腫のイメージ

胸腹腔・肺胞への漏出:胸腹水の貯留、水泡音の聴診、呼吸困難感

 また、血管内から水分が滲出して起こるのは浮腫だけではありません。胸腹腔へも漏れ出るため、胸腹水としても貯留します。呼吸音の聴取(進行した肺水腫の場合には、水泡音が聴取されます)や呼吸困難感の有無も観察することが、異常の早期発見につながります。

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