特に意識して水分出納(in-out)を確認すべき状況や病態とは?今回は術後の再出血を疑った際の、水分出納の見方や報告のポイントを解説します。
出血(in<out)

出血が持続すると静脈還流が減少、重要臓器への血流が停滞する
どのような手術でも手術後は、術操作による手術時には気づかなかった副損傷や止血した部位の再出血を起こす可能性がありえます。出血が持続すれば静脈還流が減少し、重要臓器への血流が停滞、臓器障害や死に至る危険があります。
このとき生体は、体の恒常性を守ろうと尿量を減少させたり、循環動態を変化させてなんとか出血という侵襲に耐えようとします。
“最悪の危険”を回避するために、出血が起きた際の生体反応を理解し、それに伴うin-outバランスの変化を把握することで、出血の徴候にいち早く気づくことが大切です。
再出血を疑ったときの水分出納の見方のコツ
out:バイタルサイン(心拍数、血圧、尿量、意識レベル)から出血量を類推する
出血量が10%以下(=体重50kgであれば500mL程度)では、症状は特に現れません(表1-①)1。
出血量が10%を超えると(表1-②)1、重要臓器への血流を確保しようと交感神経が刺激され、心拍数増加、末梢血管の収縮が起こります。“出血”イコール“血圧低下”と思いがちですが、このように初期(出血が15~30%程度まで)には末梢血管の収縮や血管抵抗性の上昇により収縮期血圧は上昇し、脈圧は低下する場合があるので注意が必要です。
しかしその後は、循環血液量が減少することで心拍出量も減少し、血圧が低下します(表1-③)1。その結果、腎臓への血流低下を生じ、尿量が減少します。
表1 出血性ショックにおける出血量と症状

out:血液データ(Hb↓)から出血量を類推する
持続した出血がある場合、血液データとして特にわかりやすいのがヘモグロビン(Hb)値です。
Hbは1.5g/dL程度低下するごとに、血液量約400mLの不足が推測されます。よって10g/dLが7g/dLに下がった場合、血液量800mLの出血が推測されます。
再出血を疑ったときのin-out報告のポイント
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