がん終末期でも口腔ケアは重要です。食事をしないことで唾液分泌量が低下し、口臭や感染症のリスクが高まります。唾液分泌を促すケアや保湿ケアの具体的な方法を解説します。
「がん終末期ケアの“やってはいけない”」の連載まとめはこちら
食事をしていないからといって、口腔ケアをやめてはいけない
〈理由〉食事をしないことで唾液の分泌量が低下し、口臭やさまざまな感染症のリスクにもつながるから
唾液のはたらきとは?
唾液には多くのはたらきがあり(表1)1、洗浄・抗菌作用もその1つです。唾液は食事により分泌促進されますが、食事量の低下は唾液分泌の低下を招くため、放っておくと、多くの微生物が生息する口腔内で細菌叢がバイオフィルムを形成してしまいます。
このバイオフィルムが舌の表面(舌苔)や義歯に付着することでトラブルのリスク因子となってしまうため、しっかりとした口腔ケアが大切になります。
表1 唾液のはたらき
消化関連
●消化作用
●咀嚼の補助・嚥下運動
●溶媒(味覚の発現)
感染防御
●洗浄
●抗菌:ラクトフェリンの働き
●pH緩衝:(口腔内pH5.5~8.0に保つ)胃酸の中和
●細菌の凝集
発声・発音
●潤滑:口唇・舌の動きを滑らかにする
全身
●排泄
●内分泌
●水分平衝調節
(文献1より引用)
口腔乾燥、口臭、舌苔に注意
もともとがん終末期患者さんの口腔内は、常に症状(口腔乾燥、口臭、舌苔、口腔内出血、味覚異常)を生じやすい状態にあります。さらに、がん闘病生活の中で歯科受診することが困難となり、義歯の不適合や歯周病による歯科的問題を抱えていることも少なくありません。
特に、予後が月単位から週単位、日単位と短くなるにつれ、歯磨きや含嗽が自分自身ではできなくなってきてしまうことや、経口摂取量の減少により口腔内環境は著しく悪化し、さまざまな口腔症状が重複して発症します。なかでも口腔内乾燥は、がん終末期患者さんの約8~9割の方に出現し2、私たちが最も多く遭遇する口腔症状です。
また、口腔内乾燥は口臭や舌苔の発生につながります。
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