看護師自身の身を守るために気をつけたい抗がん薬の曝露予防対策。今回は、抗がん薬の人体への影響や、抗がん薬曝露が起こりやすい経路・場面などを確認します。
抗がん薬の人体への影響とは?
Q. 抗がん薬は人体(患者、取り扱う医療者)にどんな影響がある?
Answer
患者には抗腫瘍効果と副作用がある。医療者にとっては健康上のリスクとなりうる。
抗がん薬は、殺細胞効果と同時に正常な細胞にも作用し、治療を受けた患者に悪心・嘔吐や骨髄抑制などさまざまな副作用をもたらすことが知られています。また、治療を受けた患者のなかには数か月から数年後に二次がん(抗がん薬の影響による、初発とは別のがん)が発生する場合もあります。
このような健康への影響は、治療を受ける患者だけではなく、取り扱う医療者にも及ぶ危険があります(表1)1。このうち、外皮および粘膜、神経系、消化器系、呼吸器系への影響は急性症状として、悪性腫瘍や生殖への影響は長期的な影響として起こる可能性があります。
表1 HDの職業性曝露による影響
〈急性症状〉
過敏反応
喘息発作、皮疹・眼の刺激など
皮膚・粘膜反応
皮膚刺激、接触皮膚炎、咽頭痛、脱毛など
消化器症状
食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、便秘など
循環器症状
息切れ、不整脈、末梢浮腫、胸痛、高血圧など
呼吸器症状
咳嗽、呼吸困難など
神経症状
頭痛、めまい、不眠、意識消失など
〈長期的な影響〉
悪性腫瘍
白血病、非ホジキンリンパ腫、膀胱がん、肝臓がんなど
生殖への影響
不妊症、妊娠までの期間延長、早産、低出生体重、子宮外妊娠、流産、死産、子どもの学習障害
(文献1より引用)
正しい知識に基づき、適切な曝露対策を行うことが大切です。
特に注意が必要な抗がん薬
Q. 特に注意が必要な抗がん薬は?薬剤ごとに注意のレベルは異なる?
Answer
NIOSH(米国労働安全衛生研究所)や IARC(国際がん研究機関)により注意すべき薬剤 が示されている。
HD(Hazardous Drugs:ハザーダスドラッグ)とは、曝露によって健康被害をもたらすことが知られているか、あるいは疑われている薬品のことです。NIOSH(National Institutefor Occupational Safety and Health、米国労働安全衛生研究所)は、次の6項目のうちいずれか1つ以上に当てはまるものをHDと定義し、該当する薬品のリストを挙げています2。 日本国内で承認されている抗がん薬では、約80種類が該当します。
①発がん性
②催奇形性または発生毒性
③生殖毒性
④低用量での臓器毒性
⑤遺伝毒性
⑥①から⑤の基準で有害であると認定された既存の薬剤に類似した化学構造および毒性プロファイル
これらは投与の経路や剤型に関係なく、曝露対策を行う必要があります。挙児を希望している男女や、妊娠中またはその可能性のある女性、授乳中の女性は、特に曝露予防が必要です。
また、WHO(World HealthOrganization、世界保健機関)の下部組織であるIARC(International Agency for Research on Cancer、国際がん研究機関)からは、ヒトに対する発がん性リスクに応じた4段階分類として公表されています。
このうち、グループ1(発がん性がある)、グループ2A(おそらく発がん性がある)、グループ2B(発がん性があるかもしれない)に該当する抗がん薬について、表22に示します。
表2 IARC:発がん性リスク分類と抗がん薬
グループ1
ヒトに対して発がん性がある
〈該当する抗がん薬/一般名(製品名)〉
●エトポシド(ラステット®注など)
●三酸化ヒ素(トリセノックス®注)
●シクロホスファミド(注射用エンドキサン®、エンドキサン®錠、経口用エンドキサン®原末)
●ブスルファン(ブスルフェクス®点滴静注用、マブリン®散)
●メルファラン(アルケラン®静注用、アルケラン®錠)
グループ2A
ヒトに対しておそらく発がん性がある
〈該当する抗がん薬/一般名(製品名)〉
●アザシチジン(ビダーザ®注射用)
●カルムスチン(ギリアデル®脳内留置用剤)
●シスプラチン(ランダ®注など)
●ドキソルビシン塩酸塩(ドキシル®注、アドリアシン®注用など)
●プロカルバジン塩酸塩(塩酸プロカルバジンカプセル)
グループ2B
ヒトに対して発がん性があるかもしれない
〈該当する抗がん薬/一般名(製品名)〉
●ストレプトゾシン(ザノサー®点滴静注用)
●ダウノルビシン塩酸塩(ダウノマイシン®静注用)
●ブレオマイシン塩酸塩(ブレオ®注射用)
●マイトマイシンC(マイトマイシン注用)
●ミトキサントロン塩酸塩(ノバントロン®注)
グループ3
ヒトに対する発がん性について分類できない
(文献2をもとに作成)
抗がん薬曝露が起こりやすい経路・場面
Q. 抗がん薬への曝露は、どんな経路・場面で起こりやすい?
Answer
抗がん薬の調製~運搬~投与~廃棄の一連の過程、および投与後の患者の排泄物などの取り扱い時に曝露する可能性がある。
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