看護師自身の身を守るために気をつけたい抗がん薬の曝露予防対策。今回は、安全キャビネットやCSTD(閉鎖式薬物移送デバイス)、PPE(個人防護具)を活用した対策のポイントをわかりやすく紹介します。

抗がん薬への曝露対策は何をすべき?

Q. 抗がん薬への曝露対策は、何をするとよい?

Answer
ヒエラルキーコントロール(第1回参照)に基づき、優先度の高いものから実施する。

 第1回の「ヒエラルキーコントロール」にもあったように、可能な限り安全キャビネットや閉鎖式薬物移送システム(CSTD)などの機械・器具を用いること、曝露リスクに応じ適切な個人防護具(PPE)を着用することが必要です。

 また、どのような場面でどのような予防対策をとるのか、その実践にあたっては、組織内で“抗がん薬曝露予防のための取り決め”を文書化し、組織内の医療者1人ひとりがそれに従うことが大切です。

 ここでは、曝露予防に推奨される基本的な設備・物品として、安全キャビネット、閉鎖式薬物移送システム(CSTD)、個人防護具(PPE)について紹介します。

安全キャビネットとは?

 安全キャビネットは、キャビネット内が陰圧に保たれ、 キャビネット内にはHEPAフィルターを通した清浄な空気が給気されることで無菌状態が保たれる装置です。
 抗がん薬の調製の際、安全キャビネット内で作業することで、調製者や環境の曝露を防止すること、無菌的に調製することに有用です。

 安全キャビネットは構造の違いにより、「クラスⅠ」「クラスⅡ」「クラスⅢ」の3種類に分類され、このうち「クラスⅡ」はキャビネット内の気流方式や排気方法により、さらに4タイプ(「A1」「A2」「B1」「B2」)に分類されています。抗がん薬の調製には、キャビネット内で汚染した空気が100%屋外に排気され、 キャビネット内部の高い清浄機能を維持できる「クラスⅡ・タイプ B2」を使用することが推奨されます。抗がん薬の調製は高濃度の抗がん薬に曝露する危険のある作業であり、ナースステーションや処置室の一角で調製することは可能な限り避けたほうがよいでしょう。

 なお、クリーンベンチは安全キャビネットと一見似た装置に見えますが、クリーンベンチは清浄な空気がベンチ内に吹き出され、作業空間を“陽圧に保つ”構造のものです。そのため、調製時の無菌操作には役立ちますが、抗がん薬の調製に用いると、抗がん薬のエアロゾルや微粒子の混入した空気が調製者に吹きかかり曝露につながります。安全キャビネットとクリーンベンチの違いを図11に示します。

図1 クリーンベンチと安全キャビネットの違い

クリーンベンチと安全キャビネットの違いの図

閉鎖式薬物移送デバイス(CSTD)とは?

 閉鎖式薬物移送デバイスとは、薬剤を調製・投与する際に、 外部の汚染物質の混入を防ぐと同時に、 液状あるいは気化/エアロゾル化した抗がん薬が外部に漏れ出すことを防ぐ構造をもつ器具です。

 特に投与用のCSTDでは、一般の輸液セットを用いてびん針を抜き刺しする際やプライミングする際に生じる漏れを防ぐような構造になっています。調製・投与の際に閉鎖式薬物移送デバイスを用いることで取り扱う人や環境への曝露を防止することに有用です。
 以下に、現在日本で発売されている閉鎖式薬物移送デバイスの例を示します。

BD ファシール TM システム
(画像提供:日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)

プライミングセット

BD ファシール TM システム画像

●ダブルメンブレン技術を用いたループプライミングにより、抗がん薬でも安全にプライミングが可能

輸液セット

輸液セット画像

●プライミングセットを用いて側管から抗がん薬を投与するためのメインルート

プライミングセットを用いて側管から抗がん薬を投与するためのメインルートの画像

①びん針の抜き刺しが不要
②輸液セットとコネクタの一体化により外れる心配がない
③プライミングセット交換時にもダブルメンブレン構造により薬剤の漏出を防ぐ

その他(メインルートタイプ)

メインルートタイプの画像

●メインルートのみで抗がん薬を投与している施設向けに、レジメンに変更なく曝露対策ができるタイプもラインナップされている

ChemoCLAVE
(画像提供:株式会社パルメディカル)

びん針接続セット

●現在使用中の輸液システムがそのまま使用できる

輸液セット

(スピロス)
(輸液セット)

●スピロスを輸液セット上端に接続することにより、びん針抜き刺し不要の閉鎖的投与が可能
●下端に接続することも可能

①メインルートをつなぎ替えるだけのシンプルな投与が可能
②現在使用中の輸液システムがそのまま使用可能
③複雑なレジメンも変更せずに使用可能

その他:多くのバリエーションあり

(例:輸液ライン二股タイプ)

個人防護具(PPE)とは?

 個人防護具(Personal Protective Equipment:PPE)は、個人レベルで抗がん薬の曝露を防御するうえで基本となるものです。基本のPPEを図2に示します。

この記事は会員限定記事です。