3月28日から公開の映画『ライフテープ』は、『追い風』『夢半ば』などを手がけた安楽涼監督による、初のドキュメンタリー。安楽監督の親友である、隆一さん家族の日常を映した作品です。
監督が親友の家族の暮らしを映した大切な記録
音楽制作やダンスに取り組むアーティストの隆一さんと、妻の朱香(あやか)さんには、珀久(はく)くんが生まれたばかり。珀久くんは、約12万人に1人という「メンケス病」を抱えています。メンケス病は、銅の欠乏によりさまざまな健康問題が生じる指定難病。不安を感じながらも、大切な日常を紡いできた家族は、珀久くんの喉の切開手術という大きな決断のときを迎え――。
珀久くんを見つめる隆一さんと朱香さんのやさしいまなざし。カメラもまた、その姿を温かく映し出します。散歩で立ち寄った公園でのひととき、隆一さんが打ち込んだダンスパフォーマンス、珀久くんも参加し、たくさんの友人に囲まれた結婚式……。つらさや苦しさがありながらも、幸せに暮らす家族の日々が記録されています。
メンケス病とは
銅が欠乏する先天性代謝異常症で、発症率は男児出生100万人当たり8.03人(約12万人に1人)といわれる指定難病。けいれんや発達退行などの神経症状、毛髪の異常(縮れ毛)、血管の蛇行、膀胱憩室、骨折などをきたし、治療を行わないと膀胱破裂や感染症などにより、幼児期に亡くなる例が多い。現在、根本的な治療法はない。

プロデューサーが惚れ込んだ“愛と友情のドキュメンタリー”
公開前、メディアや関係者向けに行われたティーチインには、安楽監督、大島新プロデューサー、前田亜紀プロデューサーが登壇しました。

「隆一とは小学校からの同級生で、ずっと一緒に遊んでいました」という安楽監督。珀久くんの病気のことを知ったときは、友達として何ができるだろうと悩んだといいます。
「でも、僕と隆一の間にはカメラがありました。本作をつくるきっかけは、隆一から『ドキュメンタリー映画を撮ってほしい』と言われたこと。『かわいそうに見られるかもしれない。でも俺たち家族は何よりも幸せだから、その姿を発信したい』と頼まれて、この映画をつくりました」(安楽監督)

一方、大島プロデューサーは「この作品を見たとき、すごくパワーを感じたんです。特に、10分ほどを1カットで撮影しているシーンはすごい」と、その惚れ込みようを語りました。
そんな大島プロデューサーから“激推し”され、同じく惚れ込んだという前田プロデューサー。「監督に、背景となる情報を入れたほうがよいのではと相談したら、ことごとく却下されまして(笑)。でも、情報がないなかで、見て、感じて、考えて、何をもって帰るかは人それぞれ。こういう形のドキュメンタリーもいいなと思いました」(前田プロデューサー)
大島プロデューサーも、「2カットくらいしか採用されませんでしたね(笑)。それだけ考え尽くしてつくられたということです。ベタなんですが、“愛と友情のドキュメンタリー”、そういうしかない作品だと私は思っています」と話しました。

「彼らを撮ることは幸せを分けてもらうような時間」
あらためて、安楽監督に本作公開への思いや、撮影で意識したことなどを聞きました。

――公開にあたっての心境は?
「『幸せに暮らしてる俺ら家族を撮ってほしい。そして発信したい』という話を、地元・西葛西の土手で隆一に言われたのが始まりでした。この映画を不特定多数に向けて劇場公開することは、その始まりの言葉をやっとスタートできるような感覚でもあります。彼らの生活を撮ることは、こちらにも幸せを分けてもらうような時間でした」
――珀久くんの吸引や注射を行う場面を撮る際、意識したことや印象に残っていることは?
「決して生活の邪魔をしないことは考えていました。吸引時はだいたい同じ位置から撮るようにしていました。注射の場面に関しては一度しか撮っていないのですが、これ以上撮るのはやめようと思いました。珀久くんの立場だったら、この行為を撮られたくないかもしれないと思ったからです。映画のなかでは、家族3人で手を合わせてやってる姿がどうしても必要と考え、使わせてもらいました」

――幸せがあふれるラストシーンについて、この場面を入れた思いは?
「あれは、奇跡のような大きな出来事でした。ズームをした瞬間に、カメラを持つ手が固まったのを覚えています。この家族を象徴するような明るいラストにしたいと思っていたので、隆一と珀久くんのうれしそうな顔を見て、このシーンに決めました」
――エキナスwebの読者へメッセージをお願いします。
「日々を楽しむ。大変なことがあっても手を取り合って乗り越える。幸せな日々は自分たちでつくるものだと、自分はこの家族に教えてもらいました。大切な時間を撮らせてもらって、映画という形にしました。皆さんが3人に出会ってもらえたら何よりうれしいです」

ライフテープ
3月28日(土)より[東京]ユーロスペースほか全国順次公開
出演:隆一 朱香 珀久 フィガロ
監督・撮影・編集:安楽涼
プロデューサー:大島新 前田亜紀
音楽:RYUICHI(EP「LIFE TAPE」より)
製作:すねかじりSTUDIO
制作協力:ネツゲン 配給:東風
2025年|101分|日本|DCP|ドキュメンタリー
©『ライフテープ』製作委員会
公式WEBサイト: https://lifetapefilm.jp

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