『日本人の食事摂取基準』2025年版の改定の背景や目的、主な改定ポイントを紹介。臨床の看護師がおさえておきたい要点を解説します。
- ●『日本人の食事摂取基準』改定の背景は?
●『日本人の食事摂取基準』改定のねらいは?
●『日本人の食事摂取基準』2025年版の主な改定ポイント
1.鉄の摂取基準と貧血対策
2.骨粗鬆症予防におけるカルシウムとビタミンD
3.食物繊維の摂取基準の改定と腸内環境の改善
4.病棟での対応と多職種連携のポイント
●『日本人の食事摂取基準』2025年版のナースが知っておきたいポイント
『日本人の食事摂取基準』改定の背景は?
『日本人の食事摂取基準』は、日本人の健康維持や疾病予防を目的とした栄養指針であり、科学的根拠に基づいて約5年ごとに改定されています。今回の改定(2025年版)では、近年の日本人の栄養状態や生活習慣病の動向をふまえ、健康寿命の延伸と生活の質の向上を図ることが主な目的とされています。
改定の背景には、日本社会の少子高齢化の進展があります。高齢者人口が増加する一方で、生産人口が減少し、それに伴う医療費の増加が課題となっています。このような状況に対応するため、疾病予防や健康増進の観点から、栄養管理を通じて健康を支える施策が求められています。また、食生活の変化による栄養素の摂取状況の偏りや、新たな科学的知見の蓄積も、改定の重要な要因となっています。一例として、乳児の成長に合わせたより詳細な年齢区分設定を反映した新しい年齢区分を表1に示します1。
表1 『日本人の食事摂取基準(2025年版)』で採用された年齢区分と年齢範囲
乳児※
0~5か月、6~11か月
※エネルギーおよびたんぱく質については、「0~5か月」、「6~8か月」、「9~11か月」の3つの区分で表している幼児※
1~2歳、3~5歳学童※
6~7歳、8~9歳、10~11歳思春期
12~14歳青年期
15~17歳成人※
18~29歳、30~49歳、50~64歳高齢者※
65~74歳、75歳以上妊婦・授乳婦
妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期、授乳期※同じ年齢区分でも「目標量」「推定平均必要量」が異なる場合があるため、さらに区分している
(文献1を参考に作成)
『日本人の食事摂取基準』改定のねらいは?
今回の改定のねらいとしては、表2の3点が挙げられます。
表2 主な改定のねらい
① エネルギーや主要栄養素の摂取基準を見直し、健康増進に寄与する栄養管理を強化する
② 生活習慣病の予防や治療を目的とした具体的な指針を示す
③食品の選択や摂取パターンにおいて、食文化や個々人のライフスタイルに適応した柔軟性をもたせる
特に今回の改定では、近年の日本人の栄養摂取傾向を分析し、摂取量が不足している栄養素や、逆に過剰摂取が懸念される栄養素について新たな基準が設けられました。例えば、食物繊維や鉄、カルシウムなどは摂取不足が指摘されており、これらの栄養素を適切に摂取するための基準が設定されています。また、飽和脂肪酸、ナトリウム(塩分)の過剰摂取が生活習慣病のリスクを高めることが明らかになっており、減塩の必要性などがより強調されています。
改定の意義は、栄養基準が医療現場や日常生活において活用されることで、国民全体の健康増進に寄与する点にあります。臨床現場では、患者さんの栄養状態を評価し、適切な栄養介入を行う指針として活用されることが期待されています。また、保健指導の場では、健康教育や生活習慣の改善を支えるツールとして役立つと考えられています。このように、科学的根拠に基づく『日本人の食事摂取基準(2025年版)』は、個人および集団の健康を支えるために重要な役割を果たすものです。
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『日本人の食事摂取基準』2025年版の主な改定ポイント
『日本人の食事摂取基準(2025年版)』では、最新の科学的知見が反映され、特定の栄養素や健康課題への対応を強化することを目的として改定が行われました。
そのなかでも、鉄、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防のためのカルシウムやビタミンD、食物繊維に関する基準の変更が注目されています。本節では、特に臨床ナースが理解し、実践に生かすべきポイントについて解説します。
1.鉄の摂取基準と貧血対策
鉄の摂取基準においては、特に女性の健康維持に向けた変更が行われました。2020年版と比較して、月経の有無による摂取量の差がより明確化されました。また、妊娠期の鉄需要が強調され、妊娠中期および後期の女性に対する付加量の推奨量が引き上げられています(表3)2。これにより、妊娠期貧血の予防を強化し、母子の健康を守る基盤が構築されることが目的とされています。

臨床ナースにとって重要な点は、入院患者や妊産婦における貧血リスクの早期発見と栄養介入の推進です。特に、鉄欠乏性貧血のリスクが高い患者さんには、鉄を含む栄養補助食品や鉄剤の投与が検討される場面が増える可能性があります。また、鉄の吸収を妨げる要因(例:過剰なカルシウム摂取や胃酸分泌抑制薬の使用)に注意を払うことも求められます。
2.骨粗鬆症予防におけるカルシウムとビタミンD
骨粗鬆症の予防に関する基準では、カルシウムとビタミンDの摂取がいっそう重視されています。2025年版では、骨密度の低下リスクを減らすため、全ライフステージを通じてカルシウムの適切な摂取が求められています。また、ビタミンDについては、日光照射不足や高齢者の摂取不足が課題とされ、推奨量が改定されました(表4)3。これにより、骨代謝の維持と転倒予防の取り組みが促進されることが期待されています。

病棟では、骨粗鬆症のリスクが高い患者さんへの栄養指導がいっそう重要となります。特に高齢者や慢性疾患を抱える患者さんに対しては、乳製品や小魚、ビタミンD強化食品を含む食事の提供が奨励されます。また、カルシウム吸収を助けるため、マグネシウムやビタミンKとのバランスにも配慮する必要があります。
3.食物繊維の摂取基準の改定と腸内環境の改善
食物繊維の摂取基準では、腸内環境の改善や生活習慣病予防の観点から見直しが行われました。2025年版では、便秘の解消だけでなく、腸内フローラの多様性維持や肥満、糖尿病の予防効果にも焦点が当てられています。これに伴い、摂取推奨量が微調整され、さらに水溶性と不溶性のバランスが重視されています。
臨床現場では、食物繊維の摂取が不十分な患者さんに対する指導が求められます。不溶性食物繊維が多い野菜や全粒穀物と、水溶性食物繊維が豊富な果物や海藻を適切に組み合わせた食事が推奨されます。また、便秘や腸閉塞リスクを抱える患者さんには、摂取量や形態に注意を払い、医師と連携して対応することが重要です。
4.病棟での対応と多職種連携のポイント
これらの改定ポイントを病棟で実践するためには、多職種連携が不可欠です。臨床ナースは、患者さんの栄養状態を日々観察し、必要に応じて管理栄養士や医師に相談する役割を担います。また、食事の適切な提供や補助食品の使用に関して患者さんや家族に指導を行うことが重要です。
特に、高齢者や慢性疾患をもつ患者さんでは、食事摂取基準に基づく個別的な栄養管理が必要です。臨床ナースは、患者さんの食事摂取量や嗜好、嚥下機能をふまえた対応を行いながら、栄養状態を維持・改善するサポートを行うべきです。
『日本人の食事摂取基準』2025年版のナースが知っておきたいポイント
①適切な栄養アセスメントと栄養支援
『日本人の食事摂取基準(2025年版)』へ改定されるにあたり、臨床で活用するためにはいくつかの重要なポイントをおさえておく必要があります。
まず、改定の主な目的は、栄養素ごとの推奨量や基準を科学的根拠に基づいて見直し、健康増進や疾病予防のための指針を提供することです。臨床ナースが特に注目すべき点は、患者さんの食事摂取状況に応じた適切な栄養アセスメントと、その結果を基にした栄養支援の実施です。例えば、特定の疾患をもつ患者さんに対しては、基準に従った栄養素の摂取量が重要であり、ナースには患者さんの食事内容や摂取状況を継続的にモニタリングし、必要な支援を行う役割が求められます。
②患者さんの個別性をふまえ、多職種と連携して栄養管理や指導などを行う
臨床での活用においては患者さんの年齢、性別、生活習慣に応じた個別化が大切であり、基準を単に一律に適用するのではなく、各患者さんに合わせた柔軟な対応が求められます。
さらに、多職種との連携においては、食事摂取基準を共有し、医師や管理栄養士、薬剤師と連携して患者さんへの適切な栄養管理を行うことが重要です。特に、食事療法を取り入れた治療計画では、管理栄養士が推奨する摂取量や内容をナースが正確に理解し、患者さんへの説明や指導を効果的に行う必要があります。
総じて、『日本人の食事摂取基準』の改定に伴い、臨床ナースは基準に基づいた栄養管理の知識を深め、患者さん個々のニーズに応じた栄養支援を行い、多職種と連携してその実現をめざすことが求められます。
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『日本人の食事摂取基準(2025年版)』では、鉄、カルシウム、ビタミンD、食物繊維などの栄養素に関する新たな基準を通じて、健康増進と疾病予防をめざしています。臨床ナースの皆さんには、これらの改定内容をしっかりと理解し、患者さんに適切な栄養管理を提供するために、管理栄養士や医師と連携して取り組むことが求められます。このような取り組みを通じて、患者さんの生活の質を向上させることが期待されます。
- 1.厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書:10,16.
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf(2026.5.13アクセス)
2.前掲書1:295, 357.
3.前掲書1:182
※この記事は『エキスパートナース』2025年5月号の記事を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。

