現在放送中のドラマ『救命病棟24時』(フジテレビ)の脚本家の1人、市東さやかさんにインタビュー。看護師から脚本家へと転身したきっかけや、看護師経験を活かした脚本執筆、『救命病棟24時』の見どころなどをうかがいました!

市東さやかさん写真

市東しとうさやかさん
看護師として病院で勤務後、大学院に進学。2022年に『瑠璃も玻璃も照らせば光る』でヤングシナリオ大賞の大賞を受賞。『真夏のシンデレラ』『Dr.アシュラ』『救命病棟24時』(いずれもフジテレビ)、『神のクイズ』(Prime Video)などの脚本を担当。

救命病棟24時
救命救急の現場で命に向き合う医師や看護師たちの姿を描き、1999年より連続ドラマを5シリーズ、スペシャルドラマを5作品放送。孤高の天才救命医・進藤一生を演じる江口洋介さんと、かつて進藤の下で学び、数えきれない命を救ってきた救命医・小島楓を演じる松嶋菜々子さんがダブル主演を務める。今作では、「働き方改革」や「世代間の違い」、「次世代の成長」、そして「命の選択」などの題材が描かれる。進藤と小島は若者たちとぶつかり、時には自らの価値観も問い直しながら、救命医として大切なことを伝えていく―。

(番組公式ホームページを参考に作成)

緩和ケアに興味、がん看護専門看護師をめざして大学院に進学

―看護師経験を経て脚本家になられた市東さん。まず、看護師になった経緯を教えていただけますでしょうか。

市東さん 「パン屋さんになる」「ケーキ屋さんになる」といった子どもの将来の夢が毎月変わるような流れで、小学校3~4年生のときに「大人になったら看護師さんになる」と言っていました。すると母から、「看護師はすごくいい仕事だよ」と言われ、看護師になるんだ、と決めたという感じです。また、きっかけというわけではないですが、ドラマ『ナースのお仕事』(フジテレビ)は好きでよく見ていました。

―看護師時代はどの病棟に所属されていましたか。

市東さん 通っていた大学の附属病院に就職し、希望していた血液内科と腫瘍内科の混合病棟に配属されました。大学のときの血液の授業を担当していた先生が、血液のことが好きすぎる、ちょっと個性的な方だったんです。1つの分野に打ち込んでいる人が好きなので、そこから血液内科に関心をもちました。がん患者さんを受け持つことが多く、延命を治療目標とする方が半数以上。働くなかで、自然と終末期看護や緩和ケアに興味をもちました。ずっと看護師を続けようと考えていたので、がん看護専門看護師の資格をとろうと思い、丸6年勤務した後に大学院へ進学。大学院ではがん終末期の緩和ケアを研究していました。

宮藤官九郎さんに憧れ、看護師から脚本家の道へ

―看護師から脚本家の道に進まれたきっかけを教えてください。

市東さん 大学院への進学が決まっていた看護師5~6年目のときにコロナ禍となりました。ステイホーム中にたまたま配信で見たのが、宮藤官九郎さん脚本、阿部サダヲさん主演の映画『なくもんか』。この作品ではじめて「脚本家」という職業を意識しました。感動して何回も見て、宮藤さんの大ファンに。看護の勉強も楽しかったのですが、だんだんと「宮藤さんと同じことをしてみたい」と気持ちに変わっていったんです。

―大学院に行きながら、脚本を書かれるようになったのでしょうか。

市東さん そうですね。急に道を変えたらまわりもびっくりするし、簡単になれる職業でもないので、ひとまずは大学院を卒業しないと、と思いました。在学中に、独学で書いた脚本を賞に応募して、1回は落ちちゃったんですよ。でも、もう1回出してみたら賞をとれました。いま振り返ると、熱量がすごいときだったのかもしれません(笑)。じつは卒業後に働く病院も決まっていたので悩んだのですが、脚本家は今しか挑戦できないと思い、内定を辞退しました。受賞していなかったら、そのまま専門看護師の道に進んでいたと思います。

大賞受賞作は、看護雑誌で目にした「ヤングケアラー」が題材に

―フジテレビ主催のヤングシナリオ大賞*を受賞したのが、『瑠璃も玻璃も照らせば光る』。脳梗塞の父、うつ病の母を支える、ヤングケアラーの女子高生が主人公の作品です。どのようにしてこの作品を書き上げられたのでしょうか。

*フジテレビが主催する、次世代のドラマ界を担う、新しい才能を発掘・育成するためのシナリオコンテスト。大賞受賞作品は、1時間のドラマとして放送される。

市東さん やはり看護の勉強があるので、脚本のために取材の時間を長くとるのは難しいと思いました。そこで、看護の知識を活かせる題材を探すことにしたんです。大学の図書館でいろいろと文献を読むなかで、看護雑誌で精神疾患を抱える両親をもつ子どもたちが紹介されているのを見つけました。看護師だからこそ書けるテーマかもしれないと感じ、ヤングケアラーを題材にしようと決めました。

―「瑠璃も玻璃も照らせば光る」というタイトルはどのように思いついたのでしょうか。

市東さん テーマだけは決めて、まだどんなストーリーにするか考えていなかったころ、脳神経関連の講義で構音障害の話になったんです。そのとき、20年くらいキャリアのある同級生が、「呂律をチェックするときに『瑠璃も玻璃も照らせば光る』を使うよね」と教えてくれました。調べると、「才能のある人は、どこにいても光を当てれば活躍する」というような意味のことわざで。それを知った瞬間、話が急に湧いてきました。タイトルとしての響きもいいし、「ひかる」と「瑠璃」という登場人物の名前にもなるフレーズ。教えてくれた同級生には本当に感謝しています。

―作中では、池谷のぶえさん演じる看護師が、主人公のひかる(演:豊嶋花さん)に「ヤングケアラー」のことを教える場面がありました。ご自身と患者さん家族とのかかわりから発想を得たシーンなのでしょうか。

市東さん 患者さんのご家族とのかかわりは、避けては通れません。私はがん末期の患者さんを受け持つことが多かったので、在宅でのケアについてお伝えしたり、今後を心配するご家族の相談にのったりすることが多々ありました。そうした経験から、看護師がひかるとかかわるシーンも自然と思いつきました。

―そのほか、脚本を書くうえで、看護師としての経験が活かされていると思うことはありますか。

市東さん 医療や看護の知識は、医療ドラマを書くときに役立っていますね。看護師をはじめ、医師など他職種の登場人物たちも、過去の同僚を思うとイメージしやすいです。また、がん患者さんと多く接してきた経験から、人生はいつ終わるかわからず、1日1日がかけがえのないものだという感覚は、作品に込めたいと考えています。

―デビュー後は、『真夏のシンデレラ』と『Dr.アシュラ』(いずれもフジテレビ)といった恋愛ドラマ、医療ドラマなど幅広いジャンルの脚本を執筆されています。これらの作品にまつわるエピソードを教えてください。

市東さん 『真夏のシンデレラ』の企画は、ラブストーリーという自分にとって新しい挑戦になると感じられる内容でしたが、住んでいる世界が違う人たちが出会って、絆を育んでいく、恋愛でありながら友情も描くなら、私にもできるかもと考え、チャレンジしました。大学院で、自分とは年代も生きてきた環境も違う人と知り合い、仲良くなった経験を活かせたらと思ったんです。

 『Dr.アシュラ』のように原作がある作品は、実写化するとどうしても違ってくる部分が出るのですが、原作が一番伝えたい部分は変えずに大事にしなければと考えています。『Dr.アシュラ』だと、「何よりも『命』を最優先」ということを大切にしました。

『救命病棟24時』での看護師たちの活躍

―市東さんは、現在放送中の『救命病棟24時』の脚本に参加されています。これまでの本作をどのようにご覧になっていましたか。

市東さん もともと視聴者として、すごくおもしろいなと思って見ていた作品です。脚本家になってからは、『Dr.アシュラ』を書く勉強のために見ました。日本の救命医療を題材にした有名作品に参加できるなんて、とても光栄です!

救命病棟24時キービジュアル
©フジテレビ

―江口洋介さん演じる進藤一生、松嶋菜々子さん演じる小島楓の印象は?

市東さん 私は内科で働いてきたので、わりとおっとりしていてやさしい医師がまわりに多く、進藤のような医師は身近にはいませんでしたね。新人にとっては怖いかな。でも、一緒に働き続けたら、最強の味方で、頼りになる人だなと感じます。第1シリーズでは、研修医だった小島は、指導医の進藤から「おまえは向いていない」と言われ、「進藤先生は何も教えてくれない!」と怒ったり泣いたりと、とても感情的。今はベテランの小島にも、フレッシュで何もできなかったころがあったんですよね。看護師として、新人と教育担当の両方を経験したことを思い出しました。私個人としては、辞めずに毎日仕事に来ていれば、患者さんから学びを得て、自然と経験を積んで成長していけると思っています。

―本作の見どころや、看護師を描くうえで意識していることを教えてください。

市東さん 第6シリーズでは研修医や専攻医など、若手が多く登場します。進藤や小島が彼らにどうバトンをつないでいくかが見どころです。看護師役では、シリーズ初の男性看護師長となる菅野心也(演:金田哲さん)や、若手看護師の畦地優夏(演:杏花さん)が登場。若手医師が壁にぶつかったとき、看護師たちが自分なりの言葉で手を差し伸べ、支える姿を見ていただけるとうれしいです。

―医療シーンについてはいかがでしょうか。

市東さん 脚本を書くにあたり、医学監修を担当されている日本医科大学付属病院高度救命救急センターへ見学に行きました。プロデューサーも複数の病院を取材していて、撮影には、医療シーンをきちんとつくり上げるための専門スタッフの方もいます。医師や看護師たちのリアルな動きにも注目してもらえたらと思います。

看護師という職業のプライドをドラマで伝えたい

―今後、脚本家として挑戦してみたいことを教えてください。

市東さん 現在は複数人の脚本家が書く作品に参加することが多く、さまざまな勉強ができています。学んだことを活かして、1人で1つの作品をすべて書き上げたいですね。また、私は鹿児島県の田舎で育ったので、ローカルな話を書いてみたいです。田舎の小さなコミュニティをドラマにできたらと思います。

―ドラマをとおして、看護師のどのような姿を一般の人に伝えたいですか。

市東さん 世間の看護師のイメージって、人によって解像度が大きく違いますよね。病院にあまり行かない人にとっては、外来で医師の横にいる人、くらいの印象ではないでしょうか。でも、病棟で働く看護師はもっと患者さんと密接にかかわります。医師の手伝いではなく、ちゃんと看護をしているという、職業としてのプライドに目を向けてもらえるように看護師を描いていきたいです。

―最後に、『エキスパートナースweb』の読者に向けてメッセージをお願いします。

市東さん 私もよく書店で看護雑誌を見ていて、『エキスパートナース』も手にとったことがあります。日々の仕事はやはり大変で、勉強までするのはハードルが高いと思います。自己研鑽をしている看護師さんは本当にすごい。自信をもってほしい、と言うとえらそうなのですが…。看護師時代、忙しいなかでも医療ドラマだけはチェックしていて、それが息抜きになっていました。同僚とお昼を食べながら、ドラマの話をしていましたね。『救命病棟24時』も、救命救急の現場で働く看護師さんや、それ以外の看護師さん、ぜひ皆さんに見ていただけたらと思います。

『救命病棟24時』
10月12日スタート
フジテレビ系 毎週月曜 午後9:00~9:54

〈出演〉
江口洋介 松嶋菜々子 木戸大聖 萩原利久 白石 聖 横田真悠 中山翔貴 杏花 金田 哲 長井 短 田島 亮 谷 恭輔/宮野真守/八嶋智人 沢村一樹

〈脚本〉
田辺 満、市東さやか、三浦駿斗、ひかわかよ

〈音楽〉
得田真裕

〈主題歌〉
DREAMS COME TRUE「サヨナラとバトン」
(DCT records/UNIVERSAL SIGMA)

〈プロデュース〉
足立遼太朗

〈プロデューサー〉
鹿内 植、大瀬花恵(FCC)

〈演出〉
柳沢凌介、水田成英(FCC)、星野和成、日髙貴士

〈制作協力〉
FCC

〈制作著作〉
フジテレビジョン

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