現在、放送中のNHK連続テレビ小説『風、薫る』。日本で看護がまだ知られていなかった明治期、バディとなって新たな道を切り拓いていった2人のナースの物語です。その主人公を演じる見上愛さんと上坂樹里さんが、『エキスパートナースweb』に登場! 撮影中のエピソードや、看護師を演じるうえでの思い、作品を通して届けたいことなどを語ってくれました。
※本記事では当時の時代背景をかんがみて、歴史的な表現として「看護婦」という名称を使用しています。
NHK連続テレビ小説『風、薫る』
不運が重なり、若くしてシングルマザーになった一ノ瀬りん(演:見上愛さん)と、生まれてすぐに親に捨てられ、教会で保護されて育った大家直美(演:上坂樹里さん)。看護婦養成所で出会い、手探りで始まった看護教育を受けながら、「看護とは?」「患者と向き合うとは?」ということに向き合っていく2人。明治の新しい風を感じながら、刻々と変わり続ける社会のなかで、“自分らしく幸せに生きること”を模索していく。
※大関和(おおぜき・ちか)さん、鈴木雅(すずき・まさ)さん主人公のモチーフとしながら、再構成した物語
マイペースで表情豊かなりん、素直じゃないところがかわいい直美
ご自身が演じる役に対する印象は?
見上 物語の序盤、りんにはさまざまなできごとが起こります。看護婦をめざすことになる土台の部分なので、丁寧に演じました。元家老の娘であるりんは芯の通ったところがありつつ、マイペースで思ったことをすぐ言ってしまう子でもあるんです。そのバランスをうまくとれたらいいなと思っています。まずはリハーサルで自由に演じてみて、その後監督と話し合ってお芝居をかためていくことが多いです。
上坂 直美は、明治という時代に生きづらさを感じています。こうであらないといけないという型にはまることが苦手で、生きるためならプライドを捨ててどんなことでもやってやろう、という芯の強さをもっている子です。いろんな顔をもつという役柄なので、相手やシーンによって変わる直美に苦戦をすることも。監督としっかりお話をして、役をつくっていっています。
お互いの役に対する印象は?
見上 はじめに台本を読んだとき、直美はなんてずるがしこい子なんだろうと思ったのですが(笑)、育
ちが明らかになっていくと、生きるためには手段を選んでいられなかったのだとわかりました。素直じゃないところが、今はかわいくて仕方がないです。やさしいのに言葉選びで損をしていたり、自分をさらけ出すことを怖がっていたり。強いはずなのに弱いところもあって、魅力的だなと思います。
上坂 とても感受性が豊かで、おせっかいなくらい人の懐に入るところがあるというのが、台本でのりんの印象です。実際にお芝居をしていると、ところどころ見せる表情が本当に魅力的。気持ちが全部、顔に出ているんですよね(笑)。そんな表情を見ていると、私も次の言葉が自然と出てきます。

看護の仕事がある今の時代に生まれて幸せ
バディという役柄ですが、お互いの頼りになるところは?
上坂 愛さんは私が行き詰まったときもさらっと助けてくれるんです。隣にいるだけでとても心強く、日々甘えさせていただいています!
見上 樹里ちゃんとは5歳違いなのですが、私が20歳のときは、人とこんなにうまく話せていなかったなと思います。言わなきゃいけないことはしっかり言えるし、相手の意見がよいと思ったらすぐに切り替える柔軟さがあってすごいと思います。
看護師を演じるうえで準備したことは?
見上 (上坂さんと顔を見合わせて)いっぱい看護稽古したよね。実際に看護師の方に教えていただき、最初はシーツの敷き方や包帯の巻き方をみんなで練習しました。まず、シーツを1人でうまく敷けなくて……。そこが第一関門でしたね。
上坂 看護パートが始まる前には、ナイチンゲールを研究されている先生の講義も受けました。また、撮影中も看護の先生が来て、指導をしていただきました。直美は不器用という設定なので、包帯を巻く
シーンでは、「不器用にやってください」と言われたんです。大げさにやったつもりではあったのですが、意識していない部分について、看護の先生から「へたでよかったよ」と言われて……。私って不器用なんだなと思いました(笑)。
明治の医療・看護について、発見や驚きはありましたか?
見上 当時は、「看護」という言葉さえ、あたりまえにあるものではなかったんですよね。撮影を通して疑似的にではありますが、看護という概念が日本に伝わり、広まっていく過程を見ていると、看護の仕事が生まれてよかったし、今の時代を生きられているのはありがたいことだなと思います。
上坂 私も、看護が広まった現代が、どれだけ恵まれているかを感じます。看護の講義や看護稽古のな
かで、患者さんと接するときには、言葉ももちろんですが、「観察する」ことが大事なキーワードなのだと知りました。
見上 あと、作中では、見たことのない医療機器がたくさん出てくると思います。当時のものだったり、資料を基にスタッフさんが作ってくれたものだったり。そのあたりにも注目していただきたいです。また、トレインドナースになったときの衣装も印象的です。当時の最先端をいく衣装なので、楽しみにしていてください。

大関和さん、鈴木雅さんの強さを表現できたら
りんは大関和さん、直美は鈴木雅さんがモチーフとなっています。2人の印象や、明治の女性に対する思いは?
見上 りんを演じる準備のため、大関さんにかかわる本をたくさん読みました。大関さんはものすごく聡明で、それでいて時代に負けない強さをもつ方だなと思います。自分の信じた道を生き抜く強さが魅力的です。現代に生きている人たちにも必要な強さなんじゃないかな、と思うので、この作品を通して届けられたらうれしいですね。
上坂 鈴木さんは本当にかっこよくて、自分が決めたことに対するまわりの目に負けない強さをもっている方だと思います。明治という時代に、何事にも物怖じせず、冷静に淡々とこなし、看護の道を切り拓いていった。そのことに、計り知れないくらいの強さや覚悟を感じました。私も今、この作品に対して覚悟をもって挑んでいるので、見ている方にも何かを感じ取ってもらえたらいいなと思っています。
見上 今でこそ「自分らしさを大切に」と言われていますが、明治は「女性はこうであらねばならない」という考えがありました。そこから時代がだんだんと移り変わっていくなかで、その変化をすぐに飲み込めない人もいれば、変化の波が来る前に変革しようとした、りんや直美のような人もいました。さまざまな思いが交錯していく時代のなかで、自分のやりたいことを見つけて生きるのは、とてもパワーが必要。やり遂げた大関さんを尊敬しますし、繊細な悩みも表現できたらと思います。
上坂 女性が仕事についたり、自立しようとしたりするときに、どうしても社会の壁にぶつかってしまう時代ですよね。直美は当初、マッチ工場で働いて給金をもらっているのですが、生きることの大変さ
を実感します。道のりはまっすぐではないけれど、看護の道を自ら切り拓いていった大関さんや鈴木さんを尊敬しています。

『風、薫る』のモチーフ、大関和と鈴木雅―看護の道を切り開いた2人の歩み
生い立ち、看護婦養成所での日々、日本初の派出看護婦会の立ち上げ、感染症との戦いなど、大関和さんと鈴木雅さんがどのようなナースだったのかを詳しく紹介しています。
見上さん、上坂さんから『エキスパートナースweb』の読者へメッセージ
見上 りんや直美は、ナイチンゲールの本を翻訳して読んだりしながら、「看護とは何か」ということについて一生懸命考え続けます。作品を通して、一緒にその答えを探してもらえたらなと思います。撮影を重ねるほど、看護師の方への感謝・尊敬の気持ちが大きくなっています。いつも本当にありがとうございます。
上坂 看護稽古や看護指導を通して、今の環境が恵まれていることを強く感じると同時に、看護師の方々をとても尊敬しています。これからもひたむきに作品をつくっていくので、ぜひドラマを見ていただけたらうれしいです。

『風、薫る』放送情報
NHK総合: 毎週月~土曜 午前8時~8時15分
※土曜は1週間振り返り。
NHK BS:毎週月~金曜 午前7時30分~7時45分
NHK BSプレミアム4K: 毎週月~金曜 午前7時30分~7時45分
※NHK ONEで同時・見逃し配信予定。
photo:kuma*
スタイリスト:下山さつき(見上さん)、金田健志(上坂さん)
ヘアメイク:豊田健治(見上さん)、住本彩(上坂さん)
※この記事は『エキスパートナース』2026年5月号特別記事を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。

