医療従事者が運営する新しいカタチのメディアとして、さまざまな発信をしている「メディッコ」。そのメンバーたちに、日ごろ行っている多職種連携について、具体的にどんなことをしているか情報共有しました。みなさんの職場を思い浮かべながら読んでみてください。

白石

しらいし

看護師兼ライター。総合病院の小児科・整形外科を中心に約10年以上勤務。最近は病院だけではなくいろんな場所で働き、看護師の多様な働き方を体当たりで学び中。

バサカ

ばさか

作業療法士、7年目。大学院に通学しており、多職種でのディスカッションの機会も多い。

たみお

たみお

理学療法士、11年目。慢性期病院で入院患者のリハビリテーションと、訪問リハビリテーションを担当している。

ぽりまー

ぽりまー

臨床工学技士、6年目。透析クリニック勤務のブロガー。慢性血液浄化が専門。

さぼ

さぼ

臨床工学技士、6年目。透析クリニック勤務のブロガー。慢性血液浄化が専門。

ふくっち

ふくっち

看護師、8年目。総合病院の整形外科から精神単科の病院へ勤務し公認心理師取得。

みんなどんな形で連携をとっているの?

白石(看護師) みなさんの職場では、多職種との連携はどのような場面で行われていますか?

バサカ(作業療法士) 僕は精神科にいるのですが、患者さん本人と面接をして、実際の作業場面の遂行能力を評価し、今後どのような作業・仕事に従事していくかなどを把握しています。例えば、遂行能力に関しては人それぞれに苦手なところや、できないところが違うので、実際に買い物や料理をする場面で評価します。

 看護師さんは服薬状況の確認や身体状況のチェック、地域で自活していくことができるかなどから評価しますよね。これらの評価結果を精神保健福祉士(PSW)に伝え、次の施設や就職先を決めていく、ということを普段から行っています。精神保健福祉士が行き先の施設等の 担当者と密な連携をとっていることによって、次のステップに進みやすく、アフターフォローもスムーズです。

白石(看護師) 看護師や精神保健福祉士さんとかかわることが多いのですね。何か悩みとかはありますか?

バサカ(作業療法士) そうですね~。退院が近づいてくると、作業療法士は退院準備のために病棟場面から洗濯や買い物計算、服薬管理など、患者さんの身の回りのことを自分でできるように練習してもらうよう、患者さんと話をしています。

 担当の看護師さんにもその話をするのですが、毎日担当の方がいるわけではなく、担当以外の方には共有されていないこともあります。そのため、本当は患者さんが自分でやるべきことも、すべて看護師さんの手でやってしまっていることがあり、退院の日までに数回しか練習できなかったといったことが何度かありましたね……。

たみお(理学療法士) それわかります。目標の共有を他の職種としていても、特に看護師さんはその日の担当によっては反映されていないことがあり、そのつど伝える、または聞かれるということがたびたびあります。できるだけ他職種にも伝わりやすいように専門用語を使わないようにしたり、威圧的にならないようにしたりと工夫していますが、理解されないこともあり、難しいなと感じますね。

働く場所による多職種連携の違い

白石(看護師) 作業療法士さん、理学療法士さんはやっぱり看護師とのかかわりがポイントになりそうですね。たみおさんは普段どのような連携をしているのですか?

たみお(理学療法士) うちは整形外科の患者さんが多いのですが、まずは現状どのくらい運動負荷をかけてよいか、禁忌がないかなどを医師と話し合います。それから現状を踏まえて、 運動面やADLの予後予測を看護師さんと話し合い、院内での状態観察や声かけなど、必要なことを頼むようにしています。

 また、ポータブルトイレに移行するときなど、自立度を向上させるタイミングでも看護師さんや介護福祉士さんと連携をとります。スムーズに移行できるように各職種からのアプローチを考えながら行っています。

さぼ(臨床工学技士) 僕は普段、透析クリニックで勤務していますが、連携する職種は看護師、医師がメインです。その他には薬剤師、看護補助者、介護福祉士、たまにソーシャルワーカーさんなどです。

 うちのクリニックのいいところは各職種の役割や業務がほとんど決まっていて、お互いの長所や役割を把握しているため、連携はスムーズだと思います。

白石(看護師) 病棟に比べてクリニックなどのほうが、役割分担がはっきりしていそうですね。

さぼ(臨床工学技士) そうですね。強いて言えば、患者指導を看護師さんに任せきりでなく、臨床工学技士も専門的知識と根拠をもって行えばよいと考えています。

 というのも透析療法自体の質をいくら高めても限界を感じていて、透析全体をよりよくするためには、患者さんへの水分管理や食事管理、服薬指導が必要不可欠なんです。 多職種がそれぞれの視点や専門知識をもって連携をとり、患者さんにうまく介入して、病院全体で患者さんの状態をよくするのが求められると思っています。

無意識のがまんを他職種に伝えてみて

白石(看護師) 私自身、臨床工学技士さんとあまり連携する場面がなかったのですが、透析に関する分野ではかなり多職種とかかわりがあるのですね!薬剤師さんはどうでしょう?

ぽりまー(薬剤師) 私はいま、臨床を離れてしまっているので過去の話や知人の話などをもとにお話ししますね。薬剤師は医師と相談する場面が多いですが、「連携」というと看護師さんが一番に浮かびます。看護師さんはいろんなところであらゆる仕事をしていて、いまは薬剤師の仕事でも前は看護師さんがやっていたなんてことはざらにありますよね。

 私個人では、看護師さんとの連携で困った経験は思い当たりませんが、さしさわりがないのも事実。特に看護師さんは、「もっとこうだったら楽なのに」とか思っているのではないでしょうか? 薬剤師的には、それを教えてほしいですね。 逆に薬剤師としては、「この薬を使っている患者さんのこういうことに気をつけてほしい」っていうのを伝える場が必要。そういうのも、一部の自分で気づける人はすでにやっているけど、全員が同じようにできるようになればいいなと思います。

白石(看護師) 薬剤は副作用だけでなく、管理や使用方法などいろいろと難しいことがあるので、個人的にはよく相談していますけど、そうではない看護師さんもたしかにいますね……。

ぽりまー(薬剤師) 多分、薬関係で大きい仕事は薬剤部に移ったけれど、まだ看護師さんがやってくれていることがあるんじゃないかと思います。例えば、薬を飲ませることだけをとっても、薬剤を粉砕する必要がある人、朝昼夕食後以外も薬を飲むタイミングがある人、外用薬がある人など……。患者さんごとに分けたり、色をつけたり、ホチキスで留めたりしていますが、本当にそれがやりやすいのかわかりません。 

 看護師さんも、可能な限り個別対応してくれていると思いますが、結局一緒に飲ませざるを得ない場面もあるんじゃないでしょうか。そういうのって、例えば剤形変更で解決する場面もあるので(採用薬にもかかわるのでいちがいには言えませんが)、無意識のがまんを少しでも伝えてくれたらなと思います。その負担が減るぶん、他に労力が使えますよね。薬を正しく使えば、患者さんの状態や意思が把握しやすくなります。

ふくっち(看護師) どの職種も看護師とのかかわりは多いみたいですね。僕はいまバサカさんと同じく精神科で働いているのですが、よくかかわる職種は、医師以外でいえばたしかに作業療法士さんが多いかもしれません。

 同じ患者さんでも病棟での様子と作業療法中の様が違うということがありますが、作業療法を行っているときの様子を作業療法士さんから聞いたり、反対に病棟での様子を作業療法士さんにお話ししてコミュニケーションを行っています。

 精神科では特に患者さん1人ひとりによってこだわりがあったり、精神症状も違ったりするので、日々の様子を観察して情報を共有し、心の安寧を維持できるように協力しています。 また、精神保健福祉士さんと連携して退院支援を行うことで、患者さんの社会復帰や社会生活ができるように情報のやりとりを行っています。

看護師が他職種連携で困ること

白石(看護師) 看護師としていろんな職種とかかわることが多いと思いますが、普段どんなところで困ることがありますか?

ふくっち(看護師) 退院支援を行うなかで、精神保健福祉士や他職種との熱量の違いのようなものを感じるときがあります。

 「退院するなら安定して経過しているこのときだ!」と感じて情報共有しても、退院先(施設やグループホームなど)がなかったりしてスムーズにいかないこともあります。 また、これは精神科特有の悩みではありますが、精神科では集団作業療法となります。つまり、患者さん1人にかけられる時間が少ないのです。そのため、作業療法での患者さんの様子を聞いても、ざっくりとした情報しかもらえないこともあるので、もう少し情報収集・共有の仕方に工夫が必要なのかなと感じることがあります。

多職種連携のリアル【第2回】“看護師の担当が毎日変わる問題”どうする?

この記事は『エキスパートナース』2020年6月号連載を再構成したものです。
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