せん妄を1人で判断・対応できる医療職は、基本的にいない

 看護師によるせん妄の判断の感度は15~31%、特異度は91~99%と報告1されています。つまり、看護師がせん妄と判断したらほとんどせん妄ですが、せん妄がないと判断した場合は7割以上せん妄を見逃している計算になります。

 また、医師も的確な診断ができるとはいえない点があります。例えば、精神科の医師は注意力、意識、精神症状の評価はより正確ですが、せん妄診断に必須の身体疾患など、原因の同定は得意といえません(図1-②)。加えて、医師は患者さんと接する時間が短いため変動の激しいせん妄を見落とすなどの欠点があり、これは身体科の医師(図1-③)も同様です。

 家族にいつもの様子と違うかどうかを尋ねるせん妄スクリーニングも提唱されていますが2、家族が付き添うとは限らず、急に変わってしまった患者さんに家族が動揺して冷静に評価できないこともあります(図1-④)。

 これらそれぞれの欠点を補うため、多職種・家族で協力して情報を集め、評価することが望まれます

図1 せん妄対応における各スタッフ・家族の長所と短所
1.Inouye SK,Foreman MD,Mion LC,et al.:Nurses’ recognition of delirium and its symptoms:comparison of nurse and researcher ratings.Arch Intern Med 2001;161(20):2467-2473.
2.Sands MB,Dantoc BP,Hartshorn A,et al.:Single Question in Delirium(SQiD):testing its efficacy against psychiatrist interview,the Confusion Assessment Method and the Memorial Delirium Assessment Scale.Palliat Med 2010;24(6):561-565.

この記事は『エキスパートナース』2019年10月号特集を再構成したものです。
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一般病棟でのせん妄対策【第3回】せん妄を理解するためのポイント③メカニズムを知ることで、早期発見・対応が行いやすくなる