ユマニチュードに基づくケア実施時のポイント
●「①見る」「②話す」「③触れる」「④立つ」の4つの柱によって構成される
●言葉によるメッセージと、 言葉によらないメッセージがある
●メッセージを相手に確実に届けるためには、トレーニングが必要
自分の行動が相手へのメッセージになっていることを意識する
「あなたのことを大切に思っています」ということを相手に理解してもらうための技術には、「①見る」「②話す」「③触れる」「④立つ」の4つの柱があります。
①見る
●看護に必要な身体的な情報を得るだけでなく、あなたのことを大切に思っていることを
相手が理解できるように伝える
●具体的には、正面から、近く(相手の認知機能に応じてその距離は異なる)、長く見る
②話す
●例えば、「検温です」「検査です」「じっとしていてください」などは、業務に必要なことを一方的に伝える言葉である。患者さんのことを大切に思っていることを伝えるためには、穏やかな低めの声で、前向きな言葉を選んで話す
●同じ採血をするのでも、「じっとしていてください」と告げるのと、「うまく採血できています。協力してくださってありがとうございます」と言うのでは、伝わるメッセージは大きく変わる
③触れる
●触れる手も常にメッセージを伝えている
●基本は触れている部分の面積を広くすることで、同じ力で触れていても感じる圧力を小さくする
●体位変換や着替えなどで、つい腕をつかんでしまいがちだが、それは「あなたの自由を奪っています」というメッセージとして伝わる。下から支える触れ方をすることで、「あなたのことを大切にしている」と伝えることができる
④立つ
●立つ、もしくは体を起こすことは、自分の周りの空間を認識するために非常に重要な姿勢で、肺の容積も広がり、呼吸器・循環器など生理的な改善効果が得られる
●着替えや洗面などのわずかな間でも立つ時間を確保することで、1日20分間立つことを目標にする
私たちが仕事をするときには、患者さんからの情報を得るために相手を見、話を聞き、触れることが主になりますが、それだけではなく、「自分も相手へメッセージを伝えている」という意識をもつことが大切だとユマニチュードでは考えています。
このメッセージには、言葉によるものも、言葉によらないものもあります。例えば、相手の目の高さと同じ視線に位置して見ることで、「あなたと私は平等な関係です」と伝えています。
相手の認知機能に応じた適切な距離にいることで、「私はあなたと親しい関係で、私に頼って大丈夫ですよ」と行動で伝えています。
さらに、仕事で行いがちな相手の腕や手首をつかんで動かす行為は、そんなつもりはなくても、相手には「あなたの自由を私が奪っています」というメッセージとして届いてしまっている可能性があるため、できるだけ広い面積で触れ、下から支えます。
そのほかにも、歩行介助の技術や体位変換の方法、清拭やおむつの替え方、食事介助の方法など、日常のケアを通じて「あなたのことを大切に思っている」というメッセージを届ける具体的な技術が、ユマニチュードを学ぶことで身につきます。