医療事故につながる可能性のある危険な薬に注意!今回はハイリスク薬の1つである、免疫抑制薬にいついて。感染症や肝炎のリスク、柑橘類接種によるCYP3A4阻害など、注意点を解説します。
免疫機能が低下すると、感染症や肝炎の再発に
※ここで取り上げる免疫抑制薬は、ステロイド剤や抗リウマチ薬を除いています。
危険な理由 免疫機能に影響するため、感染症や肝炎ウイルス再活性化の原因となる
“免疫”とは、自分の体を外敵から防御するための機能です。シクロスポリン(サンディミュン®、ネオーラル®など)、アザチオプリン(イムラン®など)の免疫抑制薬を用いた治療によりその機能を抑制することで、さまざまな生体防御機能も一時的に止めることになってしまい、もともと腸や皮膚・粘膜などにいる細菌などが感染源となる日和見感染症を起こしたり、肝炎ウイルスのキャリアの患者さんでは再活性化をするリスクがあります。そのため、肝機能検査やウイルスマーカーのモニタリングの必要があります。
また、生ワクチンの投与によって感染症を起こしたり、インフルエンザワクチンのような不活化ワクチンでは、免疫抑制作用によりワクチンの効果が得られない恐れがあります。
注意するポイント 患者さんが柑橘系の果物を摂取しないようにする
免疫抑制薬の適応症は、臓器移植の拒絶反応の抑制、クローン病、ステロイド依存性潰瘍性大腸炎、ネフローゼ症候群などです。そのため、一般の病院や病棟では、あまり数多くの患者さんを受け入れることはないでしょう。さらに、病態の知識がそもそも少なく、薬に関する知識も少ないため、患者さんを受けもつことになったときには、医師や薬剤師に観察のポイントや注意点を確認しておくことが必要です。
また、免疫抑制薬の多くがCYP3A4という、薬物を代謝する酵素によって分解されるので、CYP3A4のはたらきを阻害するグレープフルーツ等の柑橘系の果物やジュースを飲むことで、血液中の薬物の濃度が高くなり効果や副作用が増強してしまうリスクがあります(図1)。ここは注意して、患者さんに摂取しないように指導しましょう。
図1 CYP3A4阻害による薬効・副作用の増強
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