医療事故につながる可能性のある危険な薬に注意!今回は投与量が単位で示されるハイリスク薬である、インスリン製剤を取り上げます。投与量を間違えないために注意すべき点とは?
専用の注射器を使用しないと過量になり、低血糖による昏睡や意識レベルが低下
危険な理由 投与量が多いと低血糖の危険がある
血糖値を下げる目的で投与されるインスリン製剤。インスリン製剤の注射手技は、難しくはありませんが、取り扱いを間違えると、過剰に血糖が下がってしまい生命を脅かす危険性があります(第17回参照)。インスリンは以下に示したような注意喚起の文書が発行されているため、確認しておきましょう。
①医薬品医療機器総合機構(PMDA)
●インスリンペン型注入器とその注射針(A型専用注射針)の組み合わせ使用について(No.8 2009年2月)1
●インスリン注射器の取扱い時の注意について(No.23 2011年4月)2
●インスリン注入器の取扱い時の注意について(No.37 改訂版 2016年9月)3
②日本医療機能評価機構
●インスリン単位の誤解(No.6 2007年5月)4
●インスリン含量の誤認(第2報)(No.66 2007年5月)5
●インスリン単位の誤解(第2報)(No.131 2017年10月)6
注意するポイント 専用シリンジを使用し、医師の指示を毎回確認する
1)インスリン製剤のバイアル製剤には専用のシリンジがある
インスリン製剤のバイアル製剤を投与する際には、専用のシリンジ(注射器)があることを知っておきましょう。専用シリンジは、“目盛りが「mL」でなく「単位」になっている”“容量が少ない”など、事故を防ぐための工夫がされています(図1)。しかし、シリンジを間違えると、死亡事故にもつながります(事例①参照)。
インスリン製剤の投与ミスは、低血糖や高血糖を招き、糖尿病を悪化させたり、昏睡や意識レベルの低下を引き起こしたりする恐れがあります。最悪の場合は、命にかかわる結果となるため、インスリン製剤の種類や投与量についてダブルチェック(指差し確認)を徹底することが重要です。
事例① インスリン製剤専用シリンジの取り違い事例
●深夜、高カロリー輸液と速効型インスリン製剤の更新準備を行った。
●速効型インスリン製剤10単位を準備する際、一般用1mLシリンジで1mL(100単位)吸い取り、高カロリー輸液内に混注。←インスリン専用のシリンジを用いなかった
●インスリン製剤を使用する時は、看護師2名で指示をダブルチェックすることになっていたが実施しなかった。
●午前8時頃、病室に行くと患者さんの顔色が蒼白であり、心電図モニターを見ると心停止であったため、すぐにほかの看護師、医師に知らせた。
●蘇生処置拒否(DNR)の方針であり心肺蘇生は実施せず、死亡を確認。
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