夜勤明けすぐに寝付きにくいのは、帰宅時に浴びる光が原因!

 夜勤中に仮眠をあらかじめとっておくと、サーカディアンリズムの影響で睡眠に適さない昼間時間帯に眠る必要がないことから、生活時間が増えるメリットもあります。

 もし夜勤明けに用事がない場合は、病院の仮眠室で仮眠をとってから自宅に帰るのが最も深く長く眠れる方法です。

 その理由は、サーカディアンリズムは、光の影響を受けやすいからです。それを位相反応曲線1といいます。

 一般的に言って、体温の最も低い点(底点)は、起きる2時間前の午前5時頃にあります2。夜間睡眠で睡眠が深く長くなるのは、睡眠時間に体温が低下して体温の底点が含まれるからです。

 図13に示したように、夜勤時に体温の底点の前に病棟で光の照射を受けると、位相反応曲線の法則にしたがって底点の時刻が昼間のほうに動きます(位相遅延)。ですから、夜勤明けの主睡眠である昼間睡眠では、体温の底点があるため、睡眠に適した時間になります。

 しかしながら、夜勤明けの看護師は、退勤時に太陽光の曝露を受けざるを得ません。太陽の光は、曇天でも1万ルクス近くもあり、屋内照明どころの照度ではありません。

 すると、昼間に移動した底点が、位相反応曲線の法則で、体温の底点の後ろに光が当たることから、今度は急激に元に戻ってしまいます(位相前進)。すると、昼間睡眠は体温の上昇期に当たってしまい、睡眠が十分とれないことになります。

図1 体温の底点の前後の光照射と底点の移動方向
●図は、光が体温の底点の前に当たる場合と、後に当たる場合の体温の底点の変化をグラフにしたもの
●Dは体温の底点が後ろにずれる(位相遅延)、Aは体温の底点が前にずれる(位相前進)を示す
●夜勤中は、体温の底点の前に光が当たるため、体温の底点は後ろにずれる(図内①)。これによって夜勤明けの昼間の睡眠が眠りやすくなる
●しかし、夜勤からの帰宅途中に太陽の光が底点の後に当たるため(図内②)、今度は、体温の底点は前にずれてしまい、昼間の時間帯は体温が上昇することになってしまい、十分に眠れなくなる
(文献3より引用)
1.Czeisler CA,Kronauer RE,Allan JS,et al.:Bright light induction of strong(type 0)resetting of the human circadian pacemaker.Science 1989;244(4910):1328-1333.
2.Åkerstedt T:Wide awake a t odd hour:shiftwork,time zones and burning the midnight oil.Swedish Council for Working Life Research,Stockholm,1996:52-53.
3.Eastman CI,Martin SK:How to use light and dark to produce circadian adaptation to night shift work.Ann Med 1999;31(2):87-98.

疲れと休みのエビデンス【第6回】よい休みかたのエビデンス④

この記事は『エキスパートナース』2019年4月号特集を再構成したものです。
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