ICU在室中あるいはICU退室後、さらには退院後に生じる運動機能・認知機能・精神の障害であるPICS(集中治療後症候群)。高侵襲の治療を受ける高齢者の増加に伴い、一般病棟でも注意しておきたいPICSについて、基礎的な知識からケアのポイントまで紹介します。

ますます重要になる一般病棟での重症高齢患者の管理

 わが国は高齢化の一途をたどっています。令和5(2023)年2月1日現在、総人口は1億2,463万人で、65歳以上の高齢者人口は3,618万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も29.0%です(総務省「人口推計」年令和5年2月1日<確定値>)。

 人口の高齢化と医療技術の進歩に伴い、高齢者の手術が増加傾向にあります。また、内科治療の適応拡大なども相まって、集中治療を必要とする高齢者が年々増加し、一般病棟でも高齢者の管理が喫緊の課題となっています。

 さらに、肺炎が本邦の死因の第5位(令和3年)となり、肺炎などの感染症を契機とした敗血症も増加しています。敗血症患者の約60%、また敗血症による死亡者数の約80%を65歳以上の高齢者が占めます1。加齢は敗血症患者での死亡率の予後不良因子の1つとして知られており2、日本では敗血症患者の平均年齢が年々上昇しています。

 このようなことを考えると、今後は集中治療室(ICU)だけではなく、一般病棟にも高齢者が増加し、重症化することがあると考えられます(図1)。

図1 一般病棟患者の高齢化とPICS
一般病棟患者の高齢化とPICS
PICSは、少子高齢化や急性期医療の発達によって浮かび上がってきた救急集中治療医学の新たな課題