ICU-AWの診断

 集中治療後症候群(PICS)のうち、日常生活にかかわる運動機能障害の回復にかかる期間は数か月~数年と報告されています。運動機能障害のうち代表的なものに、ICU獲得性筋力低下(ICU-AW)が挙げられます。ICU-AWの診断基準は下記に示す通りです。①②⑤に加え、➂または④の項目を満たすと診断されます。

 “ICU”と名前についていますが、重症病態の発症後に全身の筋力低下を示す病態を指しており、一般病棟でも同様の病態を重症疾患後に認める場合があります。ICU-AWを発症した患者は、在院日数が延長し、機能回復が遅れ、死亡率が増加するなど、予後が不良であることが明らかになっています。

ICU獲得性筋力低下(ICU-AW)の診断基準1
①重症病態の発症後に全身の筋力低下が進展
②筋力低下はびまん性(近位筋/遠位筋の両者)、左右対称性、弛緩性であり、通常、脳神経の支配する機能は保たれる(*)
➂24時間以上あけて2回以上行ったMRC scoreの合計が48点未満、または検査可能な筋の平均MRC scoreが4点未満
④人工呼吸器に依存している
⑤背景にある重症疾患と関連しない筋力低下の原因が除外されている
*例として、しかめっ面など顔の動きは保たれる。

ICU-AWのリスク因子

 ICU-AWのリスク因子には、第3回のようなものが挙げられます。一般病棟では多臓器不全や長期の人工呼吸管理が行われている患者さんは少ないかもしれませんが、全身性炎症性疾患や長期臥床、高血糖の持続や腎代替療法は、どの病棟でも該当する患者がいる可能性があります。

 担当患者に、これらのリスク因子がないかを把握しておくことがICU-AWの予防や早期発見に有効です。