多職種で仕事をしていると、どうしても発生してしまう「コミュニケーションエラー」。職種ごとの仕事の優先順位の違い、使う言葉の違いなど、コミュニケーションが滞ってしまう原因はさまざまです。コミュニケーションエラーの実例を挙げながら、メディコメンバーで話し合いました。

事例1

 術後リハビリテーションが必要な患者さんで発熱があり、リハビリ中止。その後、熱が下がりはじめたときのこと。リハスタッフさんから「患者さんどうですか?」と聞かれたため、担当である私が「もう大丈夫ですよ」と答えました。すると、そのリハスタッフさんが数時間後にリハビリをやっていて……。私の言葉も足りなかったのでしょうが、ちゃんと指示を確認してほしいなと思いました。

鳥ボーイ

とりぼーい

芸人を経て看護師、12年目。急性期病院の集中治療室で、たくさんのシリンジポンプと戦っている。

白石

しらいし

看護師兼ライター。総合病院の小児科・整形外科を中心に約10年以上勤務。最近は病院だけではなくいろんな場所で働き、看護師の多様な働き方を体当たりで学び中。

喜多

きた

理学療法士、12年目。回復期リハビリテーション病院にて勤務し、中間管理職として看護スタッフとリハビリテーションスタッフの架け橋として奮闘中。

みややん

みややん

言語聴覚士、11年目。在宅医療を提供する法人で 1人、訪問STとして勤務。STの仕事、嚥下障害、言語障害を他職種、地域にコツコツと広めている。

タサモ

たさも

臨床工学技士、13年目。慢性期病院に勤務し、中間管理職として医師や看護師や他職種とのはざまで日々奮闘中。

看護師側の問題点は?

鳥ボーイ(看護師) たしかにいろんな意味として受け取れるこのやりとりは、現場でもめちゃくちゃ「あるある」ですね!「リハビリを実施してよいか」と確認しているリハスタッフに対して、患者さんの全体的な評価を常に行っている看護師の視点で、「解熱し、状態はよくなっている」という意味で「もう大丈夫ですよ」と返しています。
 日ごろから注目している問題のすれ違いが、このやりとりを引き起こしていると思います。専門性の違いがベースにあるような気がしますね!

白石(看護師) こうした会話って、主語が省略されたり、主語と述語が一致しないことで起こりがちで、「誰がどうする」「何が何だ」というのがよくわからないまま、自分の思い込みで話が進んでしまうことがありますよね。医師からの指示であれば、もう少し復唱したりするなど、緊張感をもってやりとりできるのでしょうが、何気ない会話が落とし穴になることは忘れずにいたいですね。

看護師ができる対策は?

鳥ボーイ(看護師) 確認に答える前に、相手は何について尋ねているのかをすり合わせるようにしていますね。
 リハビリの人に「どうですか?」と聞かれたなら「リハビリですか?」の確認を入れるなど、相手の立場で何が聞きたいのかを把握するようにしています。
 また、現場で意識しているもう1つのポイントは「大丈夫です」という言葉は安易に使用しないことです。「大丈夫」という言葉はどんな場面でも使えて、相手にとっても自由な解釈ができてしまう危険な言葉だと思っています。

白石(看護師) 相手の言葉通りの意味だけではなく、相手は何が知りたいのか、どうしたいのかを考えるくせがつくとよいのかなと思います。
 今回の場合でいうと、ただ患者さんの体調を心配しているだけではなく、リハビリが進められそうか様子を見に来たのかなと推測することができます。そのため、「熱も下がってきたので、このままいけば明日には少しずつリハビリを再開できそうですよ。また明日確認してください」「今、顔だけでも見ていきますか?」相手の気持ちをくみ取り、行動に結びつけられるような返事ができると認識のずれがないかと思います。