看護師の視点からの解決策①

鳥ボーイ(看護師) 患者さん本人のことから考えると、家に帰りたい意欲から熱心にリハビリに取り組み、歩行できる距離がかなり増えていることはとてもポジティブに見えます。しかし、妻の視点から考えると、活動範囲は広がったものの、アルツハイマー型認知症があるためかえって危険なことや、介護負担が増加するのではないかという懸念があります。

 患者さんがどの程度の活動や作業ができるかなどをリハスタッフに確認し、妻や家族への具体的な情報提供が必要かもしれません。ADLが上がれば退院できるというわけではないので、他職種とのゴールの共有は必要だと思います。

 また、妻の体調不良がどういったところからくるものなのかも聞けたらよいですね。例えば、「ADLが上がった夫が自宅に帰ってくることへの不安」や「介護においての息子夫婦との関係」など、身体的な問題以外の可能性も含んでいることがあります。

かなこ(看護師) 私も、妻の現在の体調が気になりました。妻自身に何か持病があり、ADLがある程度自立していたからこそ、夫婦だけでの生活ができていたのか?ということも考えられるのかなと思いました。

 患者さんのADLがある程度上がってきたのであれば、息子家族の協力が得られるときに試験的に外泊してみるというのもありですよね。実際の療養環境と自宅は違います。家に帰って生活してみることで、いろいろと課題などが見えてくるのかなと思いました。

鳥ボーイ(看護師) そうですよね。息子夫婦が隣町に住んでいるという距離感が実際どのくらいか、判断は難しいですが、どの程度の介護なら可能なのかを確認することも重要だと思います。妻が1人ですべてを背負っていないかが、看護師としては心配なところです。

かなこ(看護師) 入所時から本人が自宅への帰宅を希望していたのであれば、入所した時点で、入院前の生活状況、家の構造、息子夫婦がどの程度介入していたのか、息子夫婦の生活背景なども含めてケアマネジャーとやりとりをしておくとよかったのではないかと思います。

 そして、家族と本人で意見のずれがあるのであれば、まずは本人の意向に沿うとした場合、現実的に在宅での生活は可能なのかどうかについて、ケアマネジャー・妻・息子夫婦と早い段階でやりとりをしておく必要があります。

 ただし、現在の状況で無理でも、リハビリ介入をすることでADLが上がり、在宅で生活できるようになったという事例も過去にたくさんありました。なので、一度のやりとりで「在宅の生活は無理」と判断するのではなく、リハスタッフと実際にやりとりをして、患者さんのADLの状況を確認しておくことも大切だと思います。

鳥ボーイ(看護師) 退院支援は、急性期では「患者さんの疾患がどの程度まで回復するか」に目を向けられがちですが、回復期であればあるほど、取り巻く環境の因子が複雑なケースが多い気がします。今回のように、妻や息子夫婦に対しても健康面のサポートだけでなく社会的なサポートが足りているのか、「どのようなことが満たされれば患者さんの思いが叶えられるのか」という視点で、患者さんだけでなく、家族全体へのサポートまで考慮すると別の活路を見いだせるかもしれませんね。

 家族のサポートの程度などは看護師が情報収集可能かもしれませんが、自宅の環境や社会的サービスの活用についてはケアマネジャーとの連携が求められると思います。