看護師の視点からの解決策②

おぬ(看護師) 私は、本人が訪問リハビリには意欲的だったという点が気になりました。男性患者さんのなかには、そもそも集団のレクリエーションが苦手な人も多いです。

 デイサービスでも基本的には新聞を読んだりと、他者との交流が少ないのではと思います。訪問リハビリに意欲的だったのは、個別性が重視されており、集団行動ではなかったからというのも理由だと思います。そして、目に見えて回復がわかるというのもよかったのかもしれません。

 家族が帰宅に後ろ向きなのは、歩行できるようになったとはいえ、まだまだ介護が必要な状態が多く、また本人のがんこさもよく理解されているだろうから、本人と家族との間でなにか問題があるのかもしれません。ここでは家族に対し、自宅に戻ることへの不安や悩みを傾聴する必要があると思います。

 看護師に言いにくいなら、長年付き合いのあるケアマネジャーなどに相談するといいですね。住宅改修で家族の悩みが解決するという場合もあるので、このあたりもケアマネジャーが詳しい情報をもっていると思います。

かなこ(看護師) なるほど。誰かよその人がいるとよい人なのに、家族だけになると途端にわがままでがんこになってしまう人もいますからね……。

おぬ(看護師) また、本人の意欲低下ですが、今の状態では家族に対する絶望感と今後の不安があり、なかなかリハビリ再開に意欲が向かわないのかもしれません。ここは無理をせず、まずは今後の方向性をしっかり決め、家族にも本人にも無理のない環境にしてから、そこへ向けてのリハビリを再開するというほうがよいと思います。

 本人も精神的な面での落胆が大きいでしょうから、うつ症状が出現しないか注意深く観察していきたいですね。

 患者さんとその家族で思いが異なるとき、どちらかが間違っているわけではないので判断が難しくなります。お互いの気持ちをしっかりすり合わせるためにも、リハビリや病棟、施設などでの様子など、さまざまな場面を見ている多職種で情報を共有し、関係者みんなの状況をしっかり知ることが大切です。

この事例のまとめ

●入院した段階から退院調整は始まっている。退院調整を行う際は、まわりの家族の状況などを含め、丁寧に情報収集をする。
●利用者本人や家族の力を多角的に判断し、その状況に合わせて多職種で共通のゴールをすり合わせておく。
●身体的なサポートだけでなく、精神的・社会的なサポートが足りているかどうかも忘れずにチェックする。

多職種連携のリアル【第12回】事例で検討➂患者さんからのハラスメントにかかわる多職種連携

この記事は『エキスパートナース』2020年11月号連載を再構成したものです。
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以上の解決方法・対処例は、ケースをもとにメディッコメンバーが話し合った一例です。実際の現場では、主治医の指示のもと、それぞれの職種とこまめに連携をとり、進めていってください。