作業療法士の視点からの解決策

バサカ(作業療法士) 作業療法士としては、患者さんから「家に帰りたい」と言われたときに、家に帰ってどのように生活をしていきたいのか、詳細な聞き取りができるかなと思います。また、帰宅後に同居する予定になる奥さんや、近郊にお住まいの息子夫婦からもお話を伺いたいところです。

 現状や自宅の状況、今後の生活に対しての考え方など、家族を含めた対象者全員の思いを知ることがすり合わせの第一歩なのかなと感じます。家族にも本人の作業療法の場面での様子をお伝えしたり、看護師さんと連携を図ったりと、病棟での様子をお伝えし、現状を理解していただくことによって、家族の受け入れも捗るのではないかと思います。

 コメディカルを含めて、関係職種全員と家族を巻き込んだカンファレンスを開けていたら、意思共有もできたはずだと思います。

理学療法士の視点からの解決策

たみお(理学療法士) 理学療法士としては、身体面のアプローチは順調に進んでいたとは思いますが、本人が見据える在宅面(家屋構造や家族関係など)の情報も聴取できていたのかが気になるところです。

 施設と自宅では環境が違うので、現状の能力で自宅環境に適応できるのか、他に介護が必要な部分(食事、入浴、トイレ動作など)はないだろうかなど、身体レベルに応じて環境とのすり合わせをしておく必要があると思います。介護が必要な場面や日ごろの様子など、施設の看護師や介護士から細かく聞き取りをしておくとよかったと思います。

 また、今回のケースでは、一緒に生活している妻が体調不良になったため、介護環境が受傷前と変わっている可能性があります。その点も踏まえて、家族やケアマネジャーとのやりとりができていればよかったと思います。

 患者さんには認知症もあり、がんこな性格から、家族はこれまでにいろいろと介護負担を強いられてきた状況かもしれません。本人もその状況から、障害受容はあまりできていないと考えられるため、お互いに理解し合えていない部分があるのではないでしょうか。

 そのような相互の理解を深めるためにも、家族と本人を含めたカンファレンスを開催して、今後どのような方向性にするかを話し合いながら進めていくことが必要だと思います。