患者さんの訴えの裏に隠された疾患を見逃さないために大切な「臨床推論」。どのような思考過程を経て臨床診断を導き出しているのかを考えていきます。今回は第15回で紹介した「鼻水、咳、体のだるさ」を主訴とする患者さんの事例における、追加の身体所見について解説します。

第4ステップ 追加のアセスメント

追加の身体所見

●心電図:正常洞調律、ST変化なし
●胸部X線:異常を認めず
● 検尿:pH5.0、潜血(-)、タンパク(-)、糖(3+)、ケトン(3+)
●血液ガス分析(室内気、呼吸数30回/分):
・pH 7.266
・PaCO2 20.2Torr
・PaO2 93.2Torr
・HCO314.0mEq/L
・アニオンギャップ 20mEq/L
●血液生化学検査:
・WBC 9,900/μL
・Hb 15.6g/dL
・Plt 24.5×104/μL
・CRP 1.5mg/dL
・HbA1c 5.8%
・血糖 786mg/dL
・Na 128mEq/L
・K 5.4mEq/L
・Cl 94.0mEq/L
・Ca 9.9mg/dL
・血中ケトン(3+)
・総ビリルビン 0.3mg/dL
AST 15U/L
・ALT 15U/L
・LDH 165U/L
・CPK72U/L
・BUN 38.5mg/dL
・Cr 1.3mg/dL
・総タンパク 7.5g/dL
・血清アミラーゼ 105mU/mL
・3-ヒドロキシ酪酸 7,102μmol/L
●尿中Cペプチド排泄量 9.4μg/日
●抗GAD抗体 陰性
●腹部超音波検査:膵に異常を認めない

 今回のケースでは、呼吸数の多さと口臭異常=ケトン臭から糖尿病性ケトアシドーシスを疑い、すばやく血糖チェックを行ったところ、血糖値は測定不能の高さでした。

 担当したナースは、呼吸数の上昇をすばやく見つけ、全身状態が比較的よいことと基礎疾患がないことから、頻呼吸の原因が代謝性アシドーシスであろうと直観し、ケトン臭で糖尿病の可能性が高いと判断して、血糖測定を行っています。

 血糖測定は簡便かつ迅速で、外来でも有用な検査であり、意識障害では必須の検査です。血糖測定器は、在宅往診でも必須のアイテムの1つといわれています。バイタルサインを知るための血圧計、体温計、パルスオキシメーターと並んで、血糖測定器はいつでも使える場所に管理しましょう。

この記事は会員限定記事です。