おさえておきたいこと

頭痛の基本知識
●頭痛には他疾患の症状として生じる「二次性頭痛」のほかに、原因疾患をもたない「一次性頭痛」がある。そのうちの「片頭痛」は就労・子育て世代に多く、 社会・経済的影響が大きい
●二次性頭痛を除外した頭痛の訴えは、 片頭痛の可能性を考慮し、早期に治療につなげる

頭痛は、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分類される

 頭痛はプライマリ・ケアにおいて頻度が高く、特に脳神経内科や脳神経外科病棟では頻度が高い症候と考えられます。国際頭痛学会は多岐にわたる頭痛を、一次性頭痛二次性頭痛に分類しています。

 二次性頭痛は他の病気の症状の1つとしての頭痛であり、くも膜下出血、脳出血、脳炎などで生じることが知られています。

 二次性頭痛はしばしば生命にかかわることもあり、丁寧な問診・身体所見・神経学的所見に、必要に応じてCT/MRIなどの画像診断、血液/髄液検査を加えて診断します。

 それに対して、一次性頭痛は原因となる器質的な疾患がなく、同じような頭痛を繰り返すのが特徴です。

 一次性頭痛は慢性頭痛とも称され、頭痛そのものが病気で、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などが含まれます。

社会的には「たかが頭痛」だが、 その影響は「されど頭痛」である

 片頭痛は日常生活に支障をきたす頭痛発作を繰り返し、悪心、嘔吐、光過敏、音過敏などの随伴症状を伴います。 最も有病率が高い慢性頭痛は緊張型頭痛ですが、医療機関を受診する慢性頭痛患者の多くが片頭痛を訴えています。片頭痛患者の約70%には中等度以上の重症度を伴うことが報告されています(図1)1

図1 本邦の片頭痛の有病率と重症度
(文献1をもとに作成)

 片頭痛患者は就労や子育てに従事する20〜40代に多いことから、個人だけでなく社会全体に与える経済的影響も非常に大きいことが知られています。
 生命に危険を伴う頭痛性疾患ではないため、片頭痛をもたない人にはその支障度が理解できないことから、片頭痛は社会全体で軽視されています

頭痛性疾患の“世界共通の教科書”、「国際頭痛分類」

 1988年に「国際頭痛分類初版(THE International Classi-fication of Headache Disorders,1st Edition:ICHD-1)」が刊行されました。これにより、頭痛診断が標準化され、科学的な研究成果・治療経験が共有され、比較・検討することができるようになりました。

 片頭痛の急性期治療薬であるトリプタンの発展には、ICHD-1が大きく貢献しています。

 国際頭痛分類はその後、必要に応じて改訂され、2018年には現在の「国際頭痛分類第3版(ICHD-3)」が発表されました。ICHD-3は頭痛性疾患における世界共通の教科書の位置づけであり、英語版以外に日本語2を含めた20以上の言語に翻訳されることが、期待されています。

 片頭痛には「日常的な動作で痛みが増強する」「悪心や嘔吐を伴う」「明るい光をつらく感じる(光過敏)」や「大きな音を実際の音よりもつらく感じる(音過敏)を伴う」などの症状(下記参照)があり、これらが診断基準に含まれています。

片頭痛の症状

  • 数時間~3日間持続する発作(月に1、2回程度)
  • 悪心・嘔吐を伴う
  • 日常生活に支障をきたす痛み
  • 頭の片側がズキズキ痛む
  • 光、音に敏感
  • 体位変換や運動で痛みが増強
  • 頭痛が起こる前に「前兆症状」が起こる

(文献2,3をもとに作成)

 前兆の有無により、「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」に大別できます。前兆はキラキラした光・点・線が見えたり、視野の一部が見えにくくなったりする視覚症状が最も多く、典型的なものとしては閃輝暗点(せんきあんてん)が知られています。

 片頭痛を含めたすべての頭痛性疾患の分類および診断は、ICHD-3に準拠する必要があります。なお、片頭痛の診断基準の大筋は初版から変更されていません。