さまざまなデバイスが存在する酸素療法を、基本から解説!どの患者さんも、SpO290%以上を目標にしてよい?今回は、患者さんの状態や時期に合わせたSpO2の目標について紹介します。
AさんのSpO2は89%。呼吸不全の定義に当てはまるので、まずは経鼻カニューレで1L/分で酸素投与し、様子を見ることにしました。
みなさんは「SpO2が低かったので酸素1L/分で開始しました」と申し送りを受けたことはありませんか。よくありそうな会話ですが、はたしてこの判断は患者さんにとってベストだったのでしょうか。
本項では、患者さんの状態や時期に合わせたSpO2の目標を考えていきたいと思います。
低酸素血症の指標となるSpO2
酸素は私たちが生きていくうえで欠かせないものであり、不足すれば心虚血性変化、意識障害、臓器障害、最悪の場合死に至ります(図1)。
図1 酸素解離曲線と低酸素による影響

一般的に呼吸不全は、室内気吸入時(約21%)のPaO2<60mmHgとなる呼吸障害、またはそれに相当する呼吸障害(SpO2<90%など)を呈する異常状態と定義づけられています。SpO2はこのような低酸素血症の早期発見と病状経過を把握するために必要な指標となっています。
ここで1つの疑問が浮かびます。SpO290%未満が呼吸不全なのであれば、どの患者さんも目標は90%以上でよいのではないでしょうか。
それを考えるためには、まず酸素療法が及ぼす影響を知っておく必要があります。
酸素療法によるSpO2の上昇による影響
酸素療法は、低酸素血症を改善するために欠かせないものです。しかし必要以上の酸素投与は、人体に悪影響をもたらすという側面ももっています。
慢性呼吸器疾患の代表であるCOPDは、長期にわたる高二酸化炭素血症により、呼吸の調節がPaO2に依存しています。そのため急性増悪時にSpO2を急激に上昇させると結果的にPaO2も上昇し、CO2ナルコーシスを引き起こす危険性があります。
また近年、酸素毒性が注目されています。私たちヒトを含む健康な哺乳類に100%の酸素を24時間吸入させると、肺胞─毛細血管膜の構造的な変化、肺水腫、無気肺が起こるといわれています。
高濃度酸素でないとしても、空気中の酸素濃度を超える酸素吸入は活性酸素を増やし肺細胞が障害され、急性呼吸促迫症候群(ARDS)と似た肺環境をつくり出してしまいます。
つまりSpO2はただ高ければいいというわけではなく、必要以上に高く保つことで、私たち自身が新たな合併症をつくり出す危険性があるのです。
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