必要以上の酸素投与は「意味ない!」
酸素は生命維持に不可欠な反面、不必要な酸素投与は有害となることがあります。以下に不必要な酸素投与がもたらす酸素毒性を3つ解説します。
リスク1:肺障害の原因となる
生体は酸素を取り込み酸化還元反応によって、毒性の強い活性酸素をつくります。この活性酸素は、体内に細菌などが侵入した場合に生体防御にはたらくというよい側面があります。
しかし、活性酸素が生体の解毒機能を超えて増加すると、細胞構成成分と化学反応を起こし、細胞や組織が傷害されます。高濃度酸素を長期間吸入することで、活性酸素が増加し、その傷害は顕著となり、特に肺組織が影響を受けます。
肺への影響として、肺コンプライアンスの低下や酸素化能の低下が挙げられます。50~60%以上の酸素を長時間吸入することで、肺障害は起こりやすくなるといわれています。
リスク2:吸収性無気肺を起こす
空気呼吸の場合、酸素が21%で残りの大部分は窒素です。肺胞で毛細血管内に酸素が取り込まれても、窒素はほとんど取り込まれないので肺胞内に窒素が残り、肺胞が虚脱することはありません。
しかし、高濃度酸素吸入を行っている場合、酸素は血液に取り込まれやすいので肺胞が虚脱しやすくなり、吸収性無気肺が発生します。
リスク3:CO2ナルコーシスにつながる
高濃度酸素が投与された場合のもう1つのリスクに、CO2ナルコーシス(図1参照)が挙げられます。これは低酸素刺激によって呼吸中枢を刺激している状態で、COPDなどで生じやすいです。
そのような患者さんに、高濃度酸素吸入を行うことで呼吸中枢への刺激がなくなり、呼吸は抑制されます。そのため、COPD患者の酸素投与は低濃度・低流量から慎重に行い、目標SpO2は88~92%とします。
これらのことから、酸素化が改善したら、すみやかに酸素濃度を下げていく必要があります。この事例ではSpO2 100%で呼吸状態は落ち着いているため、酸素毒性を考慮して変更したほうがよいでしょう。
ただ、前述のとおり、酸素マスクは5L/分より少ない酸素流量では使用できないため、設定がそれ以下になる場合は、デバイスを経鼻カニューレなどに変更する必要があります(表2)。