筋萎縮性側索硬化症(ALS)の終末期における症状・病態の変化や、終末期に行いたいケアを紹介。コミュニケーション障害と呼吸困難への対応や、モルヒネの導入基準などを解説します。

ALSで現れる症状

 ALSでは、全身の筋力が低下していくこと以外にもさまざまな症状が出現します(表1参照)。

表1 ALSの進行により出現する症状

*行動異常・意欲低下・言語機能低下といった症状が特徴
①認知機能が低下
②コミュニケーション能力が低下(著しい低下にはならない場合もある)
③自律神経症状の出現
 ●血圧変動 ●低体温 
 ●排尿障害
④苦痛症状が出現
 ●四肢体幹麻痺による症状
 ・疼痛(拘縮痛、関節痛)
 ・筋痙攣
 ・全身倦怠感
 ●球麻痺による症状
 ・喉頭痙攣(喉が詰まった感じ)
 ・嚥下障害(誤嚥、肺炎、窒息)
 ●コミュニケーション障害
 ●呼吸筋麻痺に伴う症状
 ・呼吸困難
 ・排痰困難
⑤合併症が出現
 ●感染症 ●心疾患 
 ●深部静脈血栓症・肺塞栓

 例えば、患者さんの15~20%に認知症がみられ1ALS進行に伴って認知機能も低下していきます(表1-①)。認知機能低下のタイプとしてはアルツハイマー型認知症よりも、前頭側頭型認知症のような行動異常・意欲低下・言語機能低下といった症状が特徴です。

 また、TPPVを実施して5年以上経過しても48.5%は著しいコミュニケーション障害とはならないと報告されています2。一方で、11.4%は眼球運動を含めたすべての随意運動ができなくなり、まったくコミュニケーションがとれなくなる完全閉じ込め症候群(totally locked-in state:TLS)に至ります(表1-②)。

 さらに、ALSは運動ニューロンだけが障害される疾患と以前は考えられていましたが、長期のTPPV例では血圧変動、低体温、排尿障害などの自律神経症状が出現してくることがわかってきました(表1-③3

 また、病状進行による苦痛症状もみられます(表1-④)。経過中の合併症としては、肺炎・胆石胆嚢炎などの感染症、心疾患、深部静脈血栓症・肺塞栓が挙げられます(表1-⑤)。

 最終的な死因としては、呼吸器感染症が圧倒的に多く、心疾患、自律神経障害による突然死・窒息に加え、加齢による一般的な死因(がんなど)もみられます。

ALSの予後予測

 予後不良を示唆する因子には、球麻痺、呼吸障害、高齢発症、低栄養(body mass index〈BMI〉18.5未満、診断時すでに体重減少が5%以上)、および症状進行が速いことが挙げられます。

 特に、球麻痺、低栄養の発症は独立した予後規定因子であり、注意が必要です。

 これらに加え、%努力性肺活量*1の低下や国際的に使われている改訂版ALS機能評価スケール(ALS functional rating scale re-vised version:ALSFRS- R)での経時的なスコア低下も、予後予測ツールとして参考になるかもしれません。

*1【%努力性肺活量(%FVC)】=%forced vital capacity。予測努力性肺活量に対する肺活量の割合。

ALSへの緩和的治療とケア

 たとえ根治療法がなくても、緩和的治療・ケアは積極的に行っていく必要があります。

 さまざまな症状に対する対症的な薬物療法の際は、副作用として呼吸抑制が起きないように慎重に薬剤を選択します。例えば、睡眠薬であれば、ベンゾジアゼピン系よりも呼吸抑制の少ないゾルピデム(マイスリー®など)を選択します。

 ほかに、エアマットの調整安楽なポジショニング、痛みに対するリハビリテーション(ストレッチ、関節可動域〈ROM〉維持訓練を、筋疲労を残さない程度に行う)、唾液処理(誤嚥や審美上の問題による)のための唾液用低圧持続吸引器の使用や薬剤(アミノトリプチリン〈トリプタノール〉、スコポラミン軟膏〈薬価未収載〉など)によるコントロール、および口腔ケアなど、多岐にわたる緩和ケアが求められます。

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