Q. 輸血実施時の滴下速度は?

Answer
●成人の場合、輸血開始から最初の10~15分間は1mL/分。その後は状況に応じて5mL/分まで速度を上げることができる
●滴下速度は、どの輸血製剤であっても設定は同じ(急速輸血必要時は除く)

開始10~15 分間は1mL/分、その後5mL/分まで速度変更できる

 『輸血用血液製剤 取り扱いマニュアル』には、輸血速度は「成人の場合、輸血開始から最初の10~15分間は 1mL/分で輸血をする。その後は患者さんの状況に応じて5mL/ 分まで速度を上げることができる。ただし、大量出血等では急速輸血が必要となる」1と記載されています。

 この滴下速度の設定はすべての輸血製剤に適用されます。

開始直後は副作用が発生しやすい。滴下速度が遅ければ輸注量は最小限に

 それでは、なぜ、最初は輸血をゆっくり滴下する必要があるのでしょうか。 輸血開始後は副作用に注意しながら患者さんの状態を観察しますが、輸血開始後短時間で副作用が発生することがあります図12。副作用の症状が重篤であれば、輸血をただちに中止して副作用に対して必要な処置をしなければなりません。

図1 副作用発現時間(2015年)
図1 副作用発現時間(2015 年)

 このときに輸血がゆっくり滴下されていれば、副作用の原因である輸血製剤の輸注量を最小限にすることができます。

 つまり輸血開始後最初の「5分」「10分」「15分」までは輸血製剤をゆっくり滴下して患者さんの状態を観察し、副作用がなく輸血実施に問題がないと判断できれば、状況に応じて滴下速度を上げてもよいということです。

 また、輸血に伴って起こるうっ血性心不全である輸血関連循環過負荷(Transfusion Associated Circulatory Overload、TACO)は、輸血量や輸血速度が関係するといわれていますが、遅い輸血速度でも起きていることもあるため、TACOと輸血速度の因果関係はまだ明らかではありません。

 TACOの予防のためには患者さんの基礎疾患、心機能や腎機能にも注意することが必要と考えられます3

1.日本赤十字社:輸血用血液製剤 取り扱いマニュアル 2023年5月改訂版.
https://www.jrc.or.jp/mr/news/pdf/handlingmanual2304_01.pdf(2024.4.10アクセス)
2.日本赤十字社:輸血情報 1610-149 赤十字血液センターに報告された非溶血性輸血副作用─ 2015年 ─.
http://www.jrc.or.jp/mr/relate/info/pdf/輸血情報1610-149.pdf(2024.4.10アクセス)
3.岡崎仁:輸血関連循環過負荷.日本輸血・細胞治療学会輸血副作用対応ガイド改訂版作成タスクホース委員会編,輸血副反応ガイド.日本輸血・細胞治療学会, 東京,2014:50-53.
1.日本赤十字社:輸血の副作用 非溶血性副作用.https://www.jrc.or.jp/mr/reaction/non_hemolytic/febrile/(2024.4.19アクセス)

輸血業務のつまずきQ&A【最終回】輸血後に生じる副作用、どんな症状に注意する?

この記事は『エキスパートナース』2017年12月号特集を再構成したものです。
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