知っているようで意外と知らないバイタルサイン数値の“測定手技”や“判断の根拠”。今回は血圧の測定値に影響を与える因子や、どの程度の変動なら通常範囲内なのかを確認していきます。

血圧調整の影響因子は?
血圧調節の影響因子には表1があるとされます1。
表1 血圧調節の影響因子
日内変動
起床時「最低」、昼12時ごろ「最高」
気温
気温が低いと体温を逃さないように皮膚の血管が収縮
食事
代謝亢進により心拍出量が増加、循環血液量も増加
入浴
湯温により反射的に皮膚血管が収縮、血液循環がよくなると血管拡張
体位
収縮期血圧は臥位>座位>立位、拡張期血圧は立位>座位>臥位
アルコール
量によるがアルコールは血圧を一時的に下げるものの、長時間の飲酒により高血圧症の原因となる
たばこ
ニコチンによる血管収縮
運動
代謝亢進
排泄・咳
腹圧および努責による血圧上昇
睡眠
睡眠時間減により、血圧が高くなり、交感神経の緊張も高まる
精神的興奮
交感神経刺激による血管収縮と心拍出量の増加
(文献1を参考に作成)
さらにカフェインについても、体重1kgあたり6mg程度のカフェインを摂取後、「収縮期血圧」「拡張期血圧」は8~9mmHg上昇したという報告もあります2。なおドリップコーヒー100mLあたりのカフェインは90mg、緑茶には100mLあたり20mgのカフェインが含まれており、大量に飲んでいる場合は血圧測定の時間をずらすなどの配慮が必要な場合があります。
収縮期血圧の変動幅の正常範囲は?
表1などから血圧の値は変動するため、「測定前、最低5~10分は安静にしてから測定する」「激しい運動後などは呼吸数・脈拍数の増加からも血圧の変動を予測して測定の機会を判断する」などが指摘されています3。
しかし、どれくらいの変動までが許容範囲なのでしょうか?健康な会社員10名を対象に48時間15分間隔で携帯型血圧連続測定装置を装着した結果では、収縮期血圧の日内差は10mmHg以内だった4ということです。
また、一般住民を対象としたコホート研究の結果、臥位と座位の収縮期血圧の差が20mmHg以上あると「脳卒中」「虚血性心疾患」のリスクが高いことが示されました5。
さらに、高血圧患者を対象にした大規模臨床試験の事後解析では、受診のたびに外来で測定した血圧の値が大きく変動する患者さんは、「虚血性心疾患」「心不全」「脳卒中」などの疾患にかかりやすく死亡のリスクが高いことが明らかになっています6。
なお、これは収縮期血圧の変動の幅が小さいグループ(標準偏差6.5mmHg)と大きいグループ(標準偏差14.4mmHg)を比較した結果です。
したがって、いつもの収縮期血圧より10mmHg程度の変動は疾患に影響しない値だと考え、通常範囲内としてよいのではないでしょうか。
血圧測定の正しい方法は?
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