この春に発売された新刊書籍『急性期病院の看護師1200人の?から生まれた 看護のギモン』(西口幸雄、久保健太郎 編著、照林社発行)は、臨床看護師へのアンケートで集まったリアルな疑問に、各領域の専門職が知見やエビデンスをもとに回答。カテーテル・ドレーン、薬剤、呼吸管理、急変対応など、18テーマ・155項目をのことがわかる「看護のためのQ&A事典」です。
今回、特別に試し読み記事を公開しました。ぜひ、この機会に読んでみてください!
薬剤を生食100mLなどで溶解するときと、ショットでいく場合があるのはなぜ?添付文書に「溶解」と書いていないものでも溶解することが多いけれど、よいの?
胸腔ドレーンの呼吸性移動が消失した。どうすればいい?
バルーンカテーテルは根元まで挿入してはいけないの?
薬剤のギモン
当院の看護師およそ1200名に“看護に関する疑問”を募ったところ、薬剤に関する疑問がダントツで多かったです。
看護師は薬剤の最終投与者になることが多く、薬の効果や副作用の観察をする役割も求められています。そのため看護師にとって薬の知識は必要不可欠といえます。
与薬の間違いは患者さんへの影響も大きいため、ここで少しでも疑問を解消しておきましょう。
(久保健太郎)
メインと側管からの点滴は、同時に落としていいの?片方ずつがいいの?(側管が多ければメインが止まる時間が長くなるので)
答える人
薬剤師 佐々木 剛
●一定の速度で正確な投与が必要でなく、配合変化が起こらない薬剤は同時投与可能です。
注射薬は、基本は単独で安定性が維持できるように製剤設計されていますが、実際の臨床の現場においては、ルート確保の問題や投与時間の短縮などで多剤を混合して使用する場合が多いです。
ルートがない場合は、同時投与せざるを得ない場合も
流量変化などで投与量に影響を受けやすいカテコラミンやインスリン、麻薬類、pHの違いなどで混合すると白濁や結晶を形成する薬剤、乳化剤など配合禁忌のある薬剤は、メインのルートの薬剤は止めて、フラッシュ後に単独投与する必要があります。
TPN(中心静脈栄養法)患者でよく使用されるイントラリポス®は、基本は単独ルートでの投与となっていますが、治療薬が混合されていない栄養輸液の側管から同時投与可能です。イントラリポス®は投与速度が重要で、決まった投与速度以上で投与すると、さまざまな影響が出ます。投与に時間がかかりますが、メインの栄養輸液を止めると投与カロリーに大きく影響するため、同時投与できる投与設
計とすることが望ましいです。
流量変化に伴う薬効変化があるカテコラミンやインスリン、配合変化上どうしても単独ルートでの投与の薬剤は同時投与不可ですが(複数の内腔をもつ中心静脈ルートを除く)、麻薬については、管理上の理由で原則単独ルートでの投与となっていますが、微量の持続投与のため、ルート閉塞予防や投与ルートがないなどの問題で側管から同時投与する場合もあります。
アンペック®注(モルヒネ塩酸塩)は比較的配合変化は少ないといわれていますが、フェンタニル注射液(フェンタニルクエン酸塩)はアルカリ性の薬剤との混合で失活し、効果が減弱する可能性があります。また濃度によっても配合変化か変わり、配合変化のデータも限られているため、同時投与の場合は、白濁や析出など異常がないか注意して観察する必要はあるでしょう。
迷ったときは薬剤師に相談してください。
その他のギモンは書籍で!
急性期病院の看護師1200人の?から生まれた 看護のギモン
西口幸雄、久保健太郎 編著
A5・352ページ・定価2,970円(税込)
照林社
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