8月に発売された『ベッドサイドで困ったとき「私たち、こうしてます!」 実践力をUPするケアの技術』(聖マリアンナ医科大学病院 看護部 編著、照林社発行)では、若手ナースの迷いや困りごとを「スタンダートな看護技術」+先輩たちの「アセスメント・応用力」で解決!実践力が身につく1冊です。

 今回は特別に、試し読み記事を公開します。この機会にぜひチェックを!

ココに困った…

夜勤の消灯前、Lさんのベッドサイドへラウンドに行くと、身体拘束を外してほしいと訴えがあった。前日に末梢ルートを抜去したため、外してあげたいけれど再度抜去されるリスクがある。
夜間も22時と6時に抗菌薬の投与があり、消灯後に投与するよりも、Lさんが起きている消灯前に投与することはできないのかな?(看護師1年目・さくらさん)

担当する患者さんの情報

  • Lさん、80 歳代、男性。
  • 肺炎による心不全の増悪で入院。
  • 末梢ルートより維持液が40mL/時で24 時間持続投与中。
  • 肺炎に対し抗菌薬を1日3回(6時・14 時・22 時)投与。
  • 前日より食事が開始になっており、摂取量は少ないが、3割程度は摂取している。
  • 夜間せん妄があり、抜去防止のために両上肢を拘束されている。

 スタンダードなケアとして、医師の指示に基づいて維持液の点滴を夜間も流し、抗菌薬投与を指示の時間どおり22 時と6時に実施しました。抜去歴があることから、夜間せん妄のリスクで「身体拘束を外してほしい」というLさんの訴えに応えることができず、別の対応方法がないものか、先輩看護師へ相談しました。

スタンダードのケア
●原則、点滴や抗菌薬は医師の指示に基づいて投与することになっている。
●身体拘束に関しても、治療上の安静や安全を守るために、医師の指示と患者または家族の同意を得て、医師の指示で行う。

「私たち、こうしてます!」先輩ナースからのアドバイス

医師へ相談することで投与の見直しができることも

 患者さんの訴えをきちんと聞く視点は大切で、Lさんの場合、経口からの食事も少ないながら始まっているので、維持液の持続点滴が中止または日中落としきりにできないか、医師への相談次第で両上肢の拘束を外すことができたかもしれません

 時間依存性抗菌薬の場合、時間を前倒したりはしないほうがよいため、1日1回のものへ変更できないかなど、医師へ相談することは可能です

 医師へ確認した結果、Lさんは24時間持続の輸液は終了となり、日中に落としきりとなりました。末梢ルートもロックしてタオル保護し、拘束も解除でき、Lさんはその日はせん妄の悪化もなく入眠できました。抗菌薬に関しては、開始したばかりなので継続となりました。

抗菌薬の種類によって投与回数は異なる

 抗菌薬は、時間依存性と濃度依存性によっても投与回数が異なります。また、患者さんの病態によっても変化するので、点滴の時間をずらすことができる場合とそうでない場合があります。基本的には医師の指示に従い、安全に薬剤を投与することが原則となりますので、その部分は基本の考えとしておさえておきましょう。

時間・濃度依存性による抗菌薬の投与(一例)

時間依存性抗菌薬

1日に分割投与したほうが効果がある場合
(菌に対して一定濃度以上の抗菌薬が作用している時間が長いほど効果を示す)

  • セフェム系(セファゾリンナトリウムなど)
  • カルバペネム系(メロぺネムなど)
  • ペニシリン系(ベンジルペニシリンカリウムなど)

濃度依存性抗菌薬

1日1回、大量投与したほうが効果がある場合
(菌に作用するときに、できる限り抗菌薬の濃度が高いほど効果を示す)

  • キノロン系(レボフロキサシンなど)
  • アミノグリコシド系(ゲンタマイシンなど)

ベッドサイドで困ったとき「私たち、こうしてます!」
実践力をUPするケアの技術

聖マリアンナ医科大学病院 看護部 編著
B5・160ページ、定価 2,530円(税込)
照林社

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