看護師が知っておきたい、アピアランスケアの知識を解説。今回は男性患者さんのアピアランスケアについてです。がんの治療に伴う外見の変化が仕事などにもたらす影響を、患者さんとともに考えていきましょう。
女性の家族がいる場合はアドバイザーをとして協力してもらうという手段も
アピアランスケアに男女の分け隔てはありませんが、そもそもメイクやスキンケア、ハンドケアなどを日常の整容として行う習慣がない男性が多く、スタートラインから男性のほうが不利な立場にあると言えます。
例えば、「眉毛を描く」場合、「何を使うか」「どこに書くか」「どんな形か」女性の多くは知っていることですが、男性は本当に初心者です。この部分には配慮が必要でしょう。女性のご家族がいらっしゃる場合には、アドバイザーとして協力をお願いするのも1つの手段です。
自身の思いとは裏腹に、がんの治療に伴う脱毛や肌の変化を気にしていないように振る舞う男性患者さんも少なくはありません。特に、高齢の男性患者さんに脱毛に関する情報提供を行う際、「もうすでに禿(は)げているからいいよ」と言われることがあります。その言葉は本心かも知れませんし、「見た目を気にすることは、男らしくない」という心理が影響しているかもしれません。のちのち「抗がん剤で髪の毛が抜けてショックやったけど、だいぶ戻ってきたわ」と嬉しそうな表情で髪を撫(な)でる患者さんを見て、髪の量は少なくても自分のヘアスタイルを大切に思っておられたんだなと改めて知ることもあります。
本音を引き出し、外見の変化が仕事などにもたらす影響をともに考える
自分自身はそれほど外見の変化を気にしないという患者さんの場合でも、徐々に外見の変化が顕著になると、仕事や付き合いの場で、周囲から心配されるのがつらくなったり、取引先との信頼関係への影響を懸念したりすることもあります。男性患者さんへのアピアランスケアで配慮することは、「男の本音」を引き出し、社会とのつながりのなかで外見の変化がもたらす影響を一緒に考え、ご本人が着地点を見つけられるように支えることです。
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