「人工呼吸器を装着した患者さんが、急に病棟に来たらどうしよう……!?」
そんな“不安”を抱いているナースは多いのではないでしょうか。人工呼吸器装着患者の毎日のケアで、すぐに直面することの1つに「気道ケア」があります。人工呼吸器そのものを厳密に知らなくても、「いま、できる!」「これなら、できる!」日常ケアの実際を、“ズバリ”答えます。
Q. 気管吸引はどうして必要なの?
Answer
気管吸引は、分泌物による気道の狭窄・閉塞が考えられるとき、気道を開存させるために必要になります。目的は、正常なガス交換環境を提供することです。
気管吸引は、分泌物の貯留による合併症を予防することではなく、気道を開存させることによって、正常なガス交換環境を提供することが目的です。
不要な気管吸引を繰り返すと、さまざまな合併症(下記参照)を発症することになってしまうため、避けることが必要です。
●低酸素血症
●高炭酸ガス血症
●肺胞虚脱、無気肺
●気道粘膜損傷
●感染
●気管支攣縮
●不整脈、徐脈、頻脈
●異常血圧(高血圧・低血圧)
●頭蓋内圧上昇
●冠血管攣縮
●エネルギー消費 など
どんなときに気管吸引を行うの?
人工気道を有する患者で、以下のようなときに気管吸引を行います。
①分泌物が気道の開存を妨げているとき
②分泌物が「気管分岐部付近にあるとき」
気道は上気道(鼻腔・咽頭・喉頭)と下気道(気管・気管支・肺胞)で構成され、気管支は23回程度分岐を繰り返しますが、分泌物は肺胞に到達するまでのすべての粘膜で作られます。しかし、気管吸引で吸引カテーテルが届くところは気管分岐部までであることに注意する必要があります(図1)。
合併症の怖さを知ったうえでケアを
気管吸引を行うときには、前述のような合併症を考慮しなければなりません。
不整脈や血圧の上昇などは、気管吸引刺激にて交換神経に働き、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、血圧・心拍数を上昇させることによって起こります。血圧の上昇の本態は末梢血管の収縮であり、結果的に臓器血流の低下につながります。
逆に、気管吸引刺激が副交感神経に働いた場合は、迷走神経反射を起こし、血圧低下や徐脈、めまいなどが生じます。この本態は、末梢血管の虚脱であり、これも臓器血流の低下につながります。
気管吸引は、 必要なケアではありますが、 合併症の多い怖いケアであることも知っておく必要があるでしょう(図2)。
【第2回】気管吸引のタイミングはどうやって判断するの?(12月5日配信予定)
この記事は『エキスパートナース』2013年12月号の記事を再構成したものです。
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