これだけは気をつけたい看護ケアのポイントを取り上げます。リザーバー付き酸素マスクの袋が膨らまない場合は、原因を確認したうえで「流量を上げる」「弁を外す」いずれかの対応をとりましょう。わかりやすく解説していきます。

リザーバー付き酸素マスク、リザーバーが膨らまないと危ない!

例えばこんな場合…

患者の状態
●体重:60kg
●呼吸回数:15回/分
医師の指示
●「リザーバー付き酸素マスクで6L/分」

やってしまうと…呼気を強いられることになるため呼吸状態が悪化する

膨らまない理由は、リザーバーバックに貯まる酸素分が足りなくなるから

 リザーバー付き酸素マスクとは、酸素濃度60%以上必要なときに用いられる酸素供給器具です。マスク内に貯まった呼気ガスの再呼吸を防止するため、酸素流量は6L/分以上にする必要があります。

 リザーバー付き酸素マスク(図1)は、リザーバーバックとマスクの接合部、マスクの左右側方にそれぞれ一方弁(ゴム弁)がついている構造で、吸気時はリザーバーバックとマスクの接合部の一方弁が開き、マスクの側方の一方弁は閉じて、「リザーバーバック内に貯まった酸素」「チューブから出てくる酸素」「マスク内に貯まった呼気ガス」を吸入します。呼気時はリザーバーバックとマスクの接合部の一方弁は閉じ、側方の一方弁は開き、リザーバーバック内に酸素を貯め込み、「呼気」がマスク外に出ます。

図1 リザーバー付き酸素マスクの構造
リザーバー付き酸素マスクの構造

 この患者さんは体重60kgなので、1回換気量は10mL×60kgで 600mL。そして酸素流量を 6L/分としているので1秒間に流れる酸素量100mL、呼気時間3秒なので呼気時にリザーバーバック内に貯まる酸素量は100mL×3秒で300mL。次の吸気に吸い込む酸素量はこの300mLと、吸気の1秒間に流れてくる100mLを合わせて400mLとなります。

リザーバーバック内での酸素量

●体重:60kg  ●呼気時間:3秒
●吸気時間:1秒 ●呼吸回数:15回/分

1回換気量:10mL×60kg=600mL

●酸素流量:6L/分(1秒間に流れる酸素量100mL)
●呼気時にリザーバーバック内に貯まる酸素量:
100mL×3秒=300mL
●次の吸気に吸い込む酸素量:
リザーバーバック内の300mL
吸気の1秒間に流れてくる100mL の酸素
400mL

 つまり患者さんの1回換気量は600mLであるため、200mLの吸気量が足りない状態となります。マスクには一方弁が付いているため、足りない吸気量をマスクと皮膚のわずかな隙間から吸い込むことになり、吸気努力を強いられることになるため呼吸状態が悪化するのです。

流量を上げるか、マスク側方の一方弁を開放する

 リザーバー付き酸素マスク使用時、患者さんの1回換気量が多いと、リザーバーバックが膨らまなくなり、それ以上の呼吸が困難となります。
 その場合、流量を上げて対応するか、流量を上げたくない場合は、マスクの側方の一方弁(ゴム弁)を片方あるいは両方を外して使用します。その場合、吸気時に室内気が混入するため、実際の吸入酸素濃度は参考値よりも低下します。

 リザーバー付き酸素マスクを使用するときは、患者さんの呼吸パターンの観察、SpO2の観察、リザーバーバックが膨らんでいるかの観察を十分に行い、酸素流量に伴う呼気弁の取り外しについては、取扱説明書を参考にする必要があります。

参考 吸入酸素濃度のめやす

酸素流量6L/分:60%
酸素流量7L/分:70%
酸素流量8L/分:80%
酸素流量9L/分:90%
酸素流量10L/分:90%~

(文献1より引用)

1.日本呼吸器学会 肺生理専門委員会/日本呼吸管理学会 酸素療法ガイドライン作成委員会 編:酸素療法ガイドライン.メディカルレビュー社,大阪,2006:40-41.
1.露木菜緒:酸素療法.特集 エキスパートの呼吸器ケア,重症集中ケア 2011;10(2):43-45.
2.坂本すが,井手尾千代美 監修,木下佳子 編,NTT東日本関東病院看護部 執筆:完全版 ビジュアル臨床看護技術ガイド 第3版.照林社,東京,2015

ネブライザー付き酸素吸入器による酸素療法と注意点(7月16日配信予定)

この記事は『エキスパートナース』2017年6月号特集を再構成したものです。
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