頭蓋内圧亢進症状として起こる嘔吐やめまいについて、症状やメカニズムを紹介。看護の現場で役立つポイントと適切な対応方法もわかりやすく解説します。
頭蓋内圧亢進症状としての嘔吐・めまい
(髄膜刺激症状、小脳症状)
●問診(発症の状況、痛みの質など)
●頭蓋内圧亢進症状
●小脳症状(つぎ足歩行、指鼻指試験、膝踵試験)
↓気づきたいポイント
●動くと、めまいとともに悪心・嘔吐を伴う
●めまいにより開眼することが困難
●めまいだけでなく失調を伴う(麻痺はないが、歩くことができない)
頭蓋内圧亢進症状としての嘔吐の出現
吐き気は、さまざまな原因によって発生します。
このとき、消化器症状(腹痛、胸焼け、嘔吐、食欲不振、便秘・下痢)などに伴って発生する嘔吐の場合は、消化管疾患が原因であることが考えられます。
しかし、頭痛やめまいを伴っている場合では、頭蓋内疾患が原因で発生する嘔吐であることを念頭に観察する必要があります(表1)。
表1 悪心・嘔吐に伴う症状とその疾患
腹痛
●胃炎 ●胃潰瘍・十二指腸潰瘍 ●虫垂炎
●腹膜炎 ●胆石・胆嚢炎 ●肝炎
胸やけ
●逆流性食道炎
腹痛(下痢)
●食中毒
腹痛(便秘)
●腸閉塞
胸痛
●心筋梗塞
頭痛
●くも膜下出血 ●脳腫瘍 ●緑内障
めまい
●小脳出血 ●メニエール症候群
*頭痛やめまいを伴っている場合には、頭蓋内疾患(ピンク色の文字)を疑う
頭蓋内圧亢進症状としてのめまいの出現
めまいは原因や障害部位、体感などにより分類されます。
体感の仕方として「ぐるぐる目がまわる」といった表現の回転性のめまいや、「ふわっとする感覚がした」などと表現される非回転性のめまいに分けられます。
このうち回転性のめまいはさらに、障害部位により末梢性と中枢性のめまいに分類されます(表2)。
表2 めまいの分類
回転性のめまい
〈末梢性めまい〉
●内耳や内耳神経の障害によるもの
●難聴や耳鳴りなど、蝸牛症状を伴う
〈中枢性めまい〉
●脳に原因があるもの
●神経症状を伴う
非回転性のめまい
●脳血流低下時に、眼前暗黒感や失神を伴う
嘔吐・めまいの事例
●嘔吐・めまいを発症した患者
●起き上がるとめまいがあり、嘔吐してしまい、離床が進まない
●食事を摂取しても嘔吐してしまう
事例が起こったのはなぜ?
■「小脳出血」を原因とした“小脳損傷”による嘔吐・めまい

①問診:繰り返す吐き気
②頭蓋内圧亢進症状:わずかにあり
③小脳症状(つぎ足歩行、指鼻指試験、膝踵試験):失調症状が認められる
●小脳出血(上小脳動脈での出血)により小脳の損傷が起こり、運動失調、回転性のめまい、反復する嘔吐が出現している
●損傷に伴う出血により、頭蓋内圧も亢進しており、嘔吐症状につながっていると考えられる
メカニズムと鑑別のポイント
1)頭蓋内圧亢進による嘔吐
頭蓋内疾患が原因で発生する嘔吐の原因で、緊急性が高く重篤である病態は、頭蓋内圧亢進による嘔吐です。頭蓋内圧亢進には頭痛も伴います。
頭蓋内疾患により、頭蓋内の「脳実質」「脳血管」「髄液」のいずれか、または複数の容積が増え、頭蓋内圧が亢進することによって嘔吐中枢を間接的に刺激しているため引き起こされていると考えられますが、どのような経路で嘔吐中枢に至るかは明らかになっていません。
悪心・嘔吐以外に、けいれん、意識障害などの症状を伴います。
2)髄膜刺激症状による嘔吐
くも膜下出血の髄膜刺激症状による嘔吐は、くも膜下出血や髄膜炎による髄膜への刺激が、第四脳室底にある催吐性刺激を受けるための化学受容器引金帯に伝達され、嘔吐中枢に出力されることで起こります。
自覚症状として、悪心・嘔吐のほかに、頭痛を伴います。他覚症状として項部硬直、ケルニッヒ徴候、ブルジンスキー徴候などが認められます。
3)小脳出血・小脳梗塞による悪心・嘔吐
小脳出血・小脳梗塞によるめまいは、 悪心・嘔吐を伴うことも多く見られます。個人差はありますが、小脳出血による吐き気とめまいは、急性期だけではなく、長期化するケースが多く見られます。食欲不振や体重減少、嘔吐による誤嚥や、めまいによる活動性の低下から廃用や寝たきりを招き、日常生活を妨げます。
脳における空間認知のしくみは、以下の3つの情報が機能しています。
①内耳からの情報
②頸部や四肢の関節や筋肉・皮膚からの情報
③眼からの情報
それらの情報は小脳で統合され、均衡を保っていますが、小脳が障害されることによって、前庭神経からの信号中継が正常に行われず、めまいが生じ、悪心・嘔吐を伴います。
なお、小脳を栄養する血管は上小脳動脈、前下小脳動脈、後下小脳動脈の3つが主であり、それらが破綻することで小脳出血や小脳梗塞を発症します。
頭蓋内圧亢進症状としての嘔吐・めまいの観察ポイント
1)問診
嘔吐やめまいはさまざまな原因から起こるため(表3)、問診を十分に行い(表4)、アセスメントすることが大切です。
この記事は会員限定記事です。



