心不全の全体像と基礎知識をわかりやすく解説!定義や病態、分類、原因、症状など、看護師が知っておきたいポイントを心不全診療ガイドライン2025を踏まえてまとめました。

●心不全とは?
●心不全の病態とは?
●心不全の原因とは?
●心不全の症状
●心不全の病期
●心不全の重症度分類
●心不全の検査・診断
●心不全の治療

心不全とは?

 心不全とは、「心臓の構造・機能的な異常により、うっ血や心内圧上昇、およびあるいは心拍出量低下や組織低灌流をきたし、呼吸困難、浮腫、倦怠感などの症状や運動耐容能低下を呈する症候群」である1。つまり、心臓病によってさまざまな症状が現れている状態である。

 一般の方向けへのわかりやすい説明して、「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と提示されている1。

 心疾患による死亡の内訳では、心不全が最も多い(令和7年人口動態統計)。

心不全の病態とは?

 心不全は、①左心不全(左心系の循環不全をきたすもの)、②右心不全(右心系の循環不全をきたすもの)、③両心不全(両方が併存するもの)がある(図1)。

図1 左心不全と右心不全の病態
左心不全と右心不全の病態の図
(文献2より引用)

 心不全は、左室の収縮能を示すLVEF(left ventricular ejection fraction:左室駆出率)によっても分類される(表1)。

表1 LVEFによる心不全の分類

LVEFの低下した心不全(HFrEF)
LVEF:40%以下

LVEFの軽度低下した心不全(HFmrEF)
LVEF:41~49%

LVEFの保たれた心不全(HFpEF)
LVEF:50%以上

LVEFの改善した心不全(HFimpEF)
初回40%以下かつ経過で10%以上改善し40%を超える

(文献1を参考に作成)

心不全の原因とは?

 心不全の原因は多岐にわたる。大きく分けると、①心筋の異常、②血行動態の異常、③不整脈に分けられる。
 ①心筋の異常には、虚血性心疾患、心筋症、心毒性物質、感染性、免疫疾患、妊娠、浸潤性疾患(サルコイドーシスなど)、内分泌疾患、糖尿病、先天性酵素異常、筋ジストロフィーなどがある。

 ②血行動態の異常には、高血圧、弁膜症、心臓の構造異常、心外膜・心内膜などの異常、高心拍出心不全、体液量増加(腎不全など)などがある。

心不全の症状

 心不全の症状は、組織低灌流/低心拍出、肺うっ血、体うっ血によるものの大きく3つに分けられる(表2)。

表2 心不全の症状

〈病態〉
組織低灌流/低心拍出
〈症状〉
典型的:易疲労、倦怠感、運動耐容能低下
非典型的:めまい・失神、認知機能低下、せん妄、うつ
〈身体所見〉
特異的:Cheyne-Stokes呼吸
非特異的:末梢冷感、脈圧狭小、尿量減少、体重減少、筋量減少/悪液質

〈病態〉
肺うっ血/左房圧上昇
〈症状〉
典型的:息切れ、起坐呼吸、発作性夜間呼吸困難、前屈呼吸苦(Bendopnea)
非典型的:夜間咳嗽、気道狭窄音
〈身体所見〉
特異的:3音、ギャロップリズム、心尖拍動左側偏位、Cheyne-Stokes呼吸
非特異的:頻呼吸、肺ラ音

〈病態〉
体うっ血/右房圧上昇
〈症状〉
典型的:下腿浮腫、下腿以外の浮腫、前屈呼吸苦(Bendopnea)
非典型的:腹部膨満感、食後満腹感、食欲低下
〈身体所見〉
特異的:頸静脈怒張
非特異的:末梢浮腫(下腿,臀部,陰嚢)、体重増加(>2kg/週)、下肺野の呼吸音減弱/打診濁音(胸水)、肝腫大/腹水

(文献1を参考に作成)

 心不全における肺うっ血による症状としては、初期には安静時には無症状で、労作時に息切れが生じる。重症化してくると、夜間発作性呼吸困難や起座呼吸を生じる。
 体うっ血症状としては、下腿浮腫や下腿以外の浮腫、食欲低下、腹部膨満感、食後腹満感などが生じる。

 夜間発作性呼吸困難とは、夜間、就寝で臥床することで、心機能が低下した心臓にたくさんの血液が
戻ってきて(静脈還流量の増加)、肺うっ血が増悪し、呼吸困難が生じる状態である。夜間発作性呼吸困難が生じたら、起座位にするなど対応する。

 臥位で臥床している場合に呼吸困難が生じるため、患者は起き上がり呼吸を楽にしようとすること
がある。これが起座呼吸である。起き上がることにより、静脈還流量が低下し、肺うっ血が軽減することで呼吸困難も楽になる。患者が起座呼吸をとっている場合に臥床してもらうととても危険なので注意する。

心不全の病期

 適切な治療の介入には、心不全ステージ分類の把握が大切である1。ステージA(心不全リスク)、ステージB(前心不全)、ステージC(症候性心不全)、ステージD(治療抵抗性心不全)の4段階に分ける考え方が広く知られている。

 また、身体活動能力に基づいて心不全の重症度を評価するNYHA心機能分類も用いられる(表3)。

【NYHA】New York Heart Association:ニューヨーク心臓協会

表3 NYHA心機能分類

NYHAⅠ度
心疾患はあるが、通常の身体活動では症状なし

NYHA Ⅱ度
普通の身体活動で、疲労、呼吸困難などが出現(通常の身体活動がある程度制限される)

NYHA Ⅲ度
普通以下の身体活動で、愁訴が出現(通常の身体活動が高度に制限される)

NYHA Ⅳ度
安静時にも呼吸困難が生じる(安静時でさえ心不全症状が出現する)

心不全の重症度分類

 重症度を示す分類には、Forrester分類(表4)、Nohria-Stevenson分類(表5)、Killip分類(表6)がある。
 Forrester分類は心係数(CI)と肺動脈楔入圧で求める。Nohria-Stevenson分類はForrester分類よりも簡便に求められる。

表4 Forrester分類
Forrester分類
表5 Nohria-Stevenson分類
Nohria-Stevenson分類
表6 Killip分類
Killip分類

心不全の検査・診断

 心不全では、自覚症状、既往歴(冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、化学療法歴など)、家族歴、身体所見、心電図、胸部X線(図2)などを確認する1。

図2 心不全で特徴的なX線所見
心不全で特徴的なX線所見
(文献4より抜粋して引用)

 慢性心不全を疑う場合は、NT-proBNP(血中BNP/N末端プロBNP)を測定する。
 加えて、心エコー、CT・MRI・核医学検査、運動/薬剤負荷試験、心臓カテーテル検査が行われ、診断される。

心不全の治療

 治療が必要とされる心不全のステージはステージCとDである。心不全の分類による治療方針は次のと
おりである2 。

●HFrEF(LVEFの低下した心不全)
ACE阻害薬・ARB・ARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬を中心に、必要に応じて低用量で開始する。できるだけ早く、すべての使用が推奨される。

●HFmrEF(LVEFが軽度低下した心不全)
個々の病態に応じて判断。HFrEFと同様の治療を検討してもよい。

●HFpEF(LVEFの保たれた心不全)
SGLT2阻害薬
※ARNI、ARB、MRAを考慮してもよい。

●ステージD
治療薬の見直し、補助人工心臓、心臓移植、緩和ケアの導入、緩和的強心薬の使用など

会員登録(無料)でそのほかの疾患の記事が読めます!

 『エキスパートナースweb』に会員登録(無料)すると、そのほかの疾患の記事も掲載されている「お役立ち疾患ノート」のPDF(全107ページ)を無料で閲覧&ダウンロードできます。
 詳細は下記の記事をご確認ください。

1.日本循環器学会,日本心不全学会編:2025年改訂版 心不全診療ガイドライン.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Kato.pdf(2025.8.19アクセス)
2.糀谷康子執筆,金井恵理医学監修:心不全.池西静江,小山敦代,西山ゆかり編:プチナースBOOKSアセスメントに使える疾患と看護の知識.照林社,東京,2016:53.
3.厚生労働省第4回心血管疾患に係るワーキンググループ:心血管疾患の医療提供体制のイメージ.
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000165484.pdf(2025.8.19アクセス)
4.前掲書3:55.

※この記事は『エキスパートナース』2022年11月臨時増刊号を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。