ワケがあって医師がオーダーしている画像検査。臨床場面でナースがとりたい画像からの情報をわかりやすく示します。第34回は、急性冠症候群を疑って胸痛・呼吸困難での画像を見る際のポイントを紹介します。

 胸痛・呼吸困難での画像の着目ポイントは第32回を参照ください。

急性冠症候群を疑って 、担当医に病歴を伝えて診察を依頼し、「12誘導心電図」を見てもらう

〈症例〉
●50歳代男性
糖尿病で通院中であった。2時間続く胸部不快感を主訴に救急外来を受診した

 胸部不快感を主訴に受診した患者さんです。
 4つの致死的な胸痛は見逃せません。なかでも、急性冠症候群(不安定狭心症、急性心筋梗塞の総称)は病歴が大事です。糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙歴、突然死の家族歴などに注意します。
 ※急性冠症候群は冠動脈のプラークが崩れることによって起こります。動脈が完全に詰まると心筋が壊死し急性心筋梗塞となりますし、不完全閉塞で壊死に至っていない状態を不安定狭心症といいます。不安定狭心症も心筋梗塞に移行するリスクが高く早急な認識が必要な病態です。

 痛みの訴えとしては、胸全体の胸痛を訴えることが多いです。急性心筋梗塞に至っていれば、心電図でST 上昇がみられるため、担当医に相談して12誘導心電図を見てもらいましょう。
 
 ただし、ST上昇がみられない心筋梗塞(非ST上昇型心筋梗塞:NSTEMI)もあります。担当医が専門医でなければ循環器内科医と相談したり、その前後で採血しトロポニンなどの心筋逸脱酵素を検索したり、レントゲン写真やCTを依頼してほかの胸痛をきたす原因検索も同時に行うでしょう。

 心筋梗塞によって心臓の動きが悪くなり、心臓の拍出能が低下すると急性心不全となり、それに伴い肺水腫をきたすことがあります。

 しかし、そこまで至らなければ、胸部X線は正常です。急性冠症候群の診断には心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)が必要となるため、担当医が疑ったら循環期内科医に相談されます。

 この症例では、胸部X線は異常なしでしたが、心電図でST上昇が認められ、循環器内科医にただちに相談しました。
 緊急の心臓カテーテル検査の結果、冠動脈が閉塞して急性心筋梗塞になっていることがわかり(図1-①)、そのままカテーテル治療が行われました(図1-②)。

図1 担当医が循環器内科医にコンサルし、緊急で行われた冠動脈造影像

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