排便のしやすさとトイレの高さの関係とは?立位、直立・座位、体幹前傾・座位、蹲踞位、臥位、それぞれの骨盤にかかる外力に着目して、排便しやすい姿勢を解説します。

排便にとってトイレの高さが大切な理由とは?

POINT

●最も排便しやすい姿勢は、しゃがみこみ(蹲踞位/そんきょい)である。
●トイレの高さは高すぎず、低すぎないように調整しよう。

トイレの歴史

 トイレには和式と洋式がありますが、最近は洋式トイレが圧倒的に増えています。洋式トイレは衛生面に優れており、また、足腰の弱い人や高齢者も安心して使用できる利点があります。

 洋式トイレは、王侯貴族が用いた椅子型トイレの延長上として西洋で発展してきました。アジア・アフリカ各地ではしゃがみこみ(蹲踞位、squatting)式トイレが普及しており、本邦の和式トイレもそのなかに包含されます。広い地域でのしゃがみこみ式トイレの存在は、蓋然性の高いなりたちと解釈してよいのではないでしょうか。

 哺乳動物のなかで、身近に観察できる犬の排便をみてみましょう。図1のように、おしりを下向きに突き出して、肛門管を垂直化させ、背中を丸め、股関節を屈曲しています。これはヒトの蹲踞位の状態に類似しています。

図1 犬の排便の姿勢

犬の排便の姿勢のイラスト

座位姿勢と蹲踞姿勢の直腸-肛門角度の違いは?

 直腸・肛門の動態を評価する排便造影検査では、蹲踞位での直腸-肛門角(図2-①)が座位の直腸-肛門角(図2-②)よりもさらに鈍角となり、排便しやすいことを示しています。

図2 姿勢による排便時の直腸ー肛門角の違い

姿勢による排便時の直腸ー肛門角の違いを解説するイラスト

姿勢と排便に関係する骨盤付近の6つの筋肉

 姿勢による排便への影響を明らかにするには、骨盤に付着する6つの筋肉のことを理解する必要があります。すなわち、脊柱起立筋、大殿筋、腸骨筋、ハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)、大腿直筋、腹直筋です(図3)。

図3 骨盤に付着する6つの筋肉(赤字)

骨盤に付着する6つの筋肉を示すイラスト

 これらは抗重力筋としてはたらき、立位をとる際や姿勢の保持、股関節を屈曲する際に重要な役割をもちます。次のような条件を満たすときに、排便を行いやすくなります。

①排便をスムーズにする骨盤底筋の弛緩には、骨盤に作用する垂直外力は不利に、水平腹側(前方)外力は有利にはたらきます。特に複数の垂直外力が、それぞれ骨盤前傾と骨盤後傾と相反するように同時に作用するときは、排便は著しく不利といえます。

②腹圧は腹筋群の収縮力に依存しますが、体幹前傾によって腹直筋の収縮力は高まります。

排便しやすい姿勢と骨盤にかかる外力

 つぎに骨盤にかかる外力を姿勢別にみます。これらをまとめると排便しやすい順に、蹲踞位→体幹前傾・座位→直立・座位→立位→臥位で、蹲踞位が最も排便しやすい姿勢となります。

A.立位

●脊柱起立筋外力が頭側に作用(骨盤前傾)、ハムストリングス外力が足側に作用(骨盤後傾)、大殿筋、腸骨筋は背側 – 足側に作用する。
●複数の外力の垂直作用に拮抗するため、骨盤底筋は収縮する。

B.直立・座位

●脊柱起立筋外力は立位と同様。股関節は屈曲しているので、ハムストリングス・大殿筋の外力作用はない。代わりに大腿直筋や腸骨筋の外力が前方に作用し、垂直外力が減ることにより「A:立位」より排便しやすくなる。

直立・座位の排便のイラスト

C.体幹前傾・座位

●脊柱起立筋外力が「B:直立・座位」姿勢に比べて弱くなり、頭側 – 前方に作用し、腹直筋は軽度屈曲位になるので腹直筋力を強めることができる。大殿筋・大腿直筋・腸骨筋の外力は「B:直立・座位」姿勢と同様で前方に作用する。
●座位に比べて腹直筋力の増強分、腹圧が上昇し、「B:直立・座位」より排便しやすくなる。

体幹前傾・座位での排便のイラスト

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