認知症の人のBPSDの理解を深め、日常生活をアセスメントするには?作業療法士が行うBPSDを伴う認知症の人の生活アセスメントを中心にお伝えします。アセスメントの具体例を見ていきましょう。
日常生活の様式に潜む本人にとっての意味をアセスメントする
2つの事例(第2回参照)に示すように、その人特有の作業の意味をアセスメントすることは、認知症のBPSDを伴う行動を理解し、適切なアプローチを行うために有効です。認知症の発症前に、長い歳月のなかで身についた生活習慣、社会から受け入れられた役割行動、本人が大切に思い行い続けていた行動のパターンなど、本人とご家族しか知り得ない情報をとり、認知症の人の行動に影響を及ぼしそうな点を結びつけることが大切です。
日常生活の意味を探るための作業療法で用いられるツール
ここで、日常生活の様式に潜む本人にとっての意味を役割という視点からアセスメントするための、作業療法で用いられる「役割チェックリスト」というツールを紹介します。
役割チェックリストは、OTのOakley Fによって開発されました(表1)1,2。2部構成になっており、第1部において過去、現在、将来に「学生」「勤労者」「ボランティア」「養育者」「家庭維持者」「友人」「家族の一員」「宗教への参加者」「趣味人/愛好家」「組織への参加者」の10の役割を担うかどうかを問い、第2部において同じ10の役割の価値に関して問うものです。再検査信頼性があり、特に高齢者の反応には首尾一貫性が認められています。
事例からみる役割チェックリストの使い方
役割チェックリストを用いて、あるアルツハイマー型認知症の女性高齢者の「家庭維持」の役割についてアセスメントした例です。どのような役割を、どんなふうに担っていたかを知るために、本人をよく知っている娘さんに「お母様は、お掃除などはよくなさっていたのですか?」と尋ねました。
娘さんは「母はきれい好きで、朝、父が起きる前に、朝食の支度をするよりも先に、ほうきで居間や玄関を掃いて、棚やテーブルを拭き、父の起床を待つのが常でした。病気(認知症)になる前はよく行っていたそうです。今はベッド周りも乱雑で、当時の母とは思えませんが……」と答えました。
役割チェックリストでは、「役割」の「家庭維持者」の「過去に担っていた」に印がつきました。「現在担っている」には印はつきませんが、娘さんの希望としての想いも含め、「将来担いたい」、そして、「価値」も「とても価値がある」に印がつきました。
娘さんは言います、「母はとてもきれい好きだったから、掃除をすることを大切に思い(とても価値がある)、きっと将来も掃除をする役割を担いたいと言うと思います」と。こうした強い価値と役割を望む認知症の人の気持ちは、脳に潜在的に蓄積され、何かのきっかけにより、BPSDとして出現する可能性があると思います。
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