皆さんが看護師として、日々行っている臨床現場での「実践」。それらは、どんな“気づき”をきっかけとして起こるのでしょうか?また、“患者さんの力”をどう引き出すのでしょうか?
事例紹介をもとに、看護介入をナラティブに伝えます。
ケアを拒んでいるように見えた進行性核上性麻痺の患者さんの“思い”
Aさん、80代の男性。数年前より進行性核上性麻痺(進行性の難病。歩行障害、パーキンソニズム、認知症などを特徴とし、進行するにつれて構音障害や嚥下障害、認知症が出現し、徐々に歩行・立位不能となる)を発症しています。
Aさんは妻との2人暮らしで、要介護3(食事や排泄、身の回りの世話、立ち上がりなどがほとんど自分1人ではできない)です。パーキンソニズムにより“小刻み歩行”“すくみ足”が著明にありましたが、自宅では室内自立し、通所リハビリテーション施設などを活用し、自宅療養していました。
今回、誤嚥性肺炎のために入院し、病棟では肺炎治療と嚥下訓練を行っていました。
入院後、病棟看護師は、発熱もあり立位も不安定であったことから、転倒・転落などのリスクを考慮した安全へのケアのため差し込み式ベッド柵を使用し、Aさんに“移乗時は看護師を呼んでほしいこと”を説明しました。
しかし、Aさんが夜間に1人で車椅子に移乗していたため、再度、転倒の危険性などを話すと、「俺は俺のやりたいようにやらせてくれ」と介助を拒み、声を荒げました。
また、摂食指導では、「監視されている」などと話す場面が続き、病棟看護師より“対応に苦慮している”と相談がありました。この相談が、Aさんとの出会いでした。