日々の看護業務のなかで感じるさまざまな悩み。内容によっては他職種に相談することで、すぐに解決するかもしれません。どんな状況で、どんな職種の人が頼りになるか、現場の声から考えます!

くはらくはら

臨床工学技士(CE)

臨床工学技士、12年目。総合病院勤務。幅広い分野で仕事をしているが、主に人工透析業務、人工心肺業務、機器管理業務に就くことが多い。

まつだまつだ

臨床工学技士(CE)

臨床工学技士、19年目。10年以上の臨床経験の後、教員を経て、現在は都内の病院の専従医療安全管理者*¹。臨床工学技士としてはほぼすべての業務を経験、医療機器管理には自信がある。教員時代は、人工呼吸器に関する授業も多数担当。
*1【医療安全管理者】医療機関の管理者から、安全管理のために必要な権限の委譲と、人材、予算およびインフラなど必要な資源を付与されて、管理者の指示に基づいて、その業務を行う¹。

●臨床工学技士(CE:Clinical Engineer)
病院で使用する医療機器を取り扱う仕事。生命維持管理装置の保守・点検を行い、安全に、安心して機械が使用できる環境を維持する。病棟をはじめ、透析室・集中治療室・手術室・心臓カテーテル室などで人工呼吸器や人工透析装置を操作して、治療に携わっている。

人工呼吸器や透析装置ってどうも苦手!医療機器の勉強のコツや、困ったときの対処法を知りたい

今回の相談

病棟からICUに異動してきた看護師です。ICUでは人工呼吸器や人工透析装置などを使用している患者さんが多いのですが、正直覚えるポイントも多く、どこから勉強したらいいのかがわかりません。臨床工学技士さんからみて、まずはここだけは見逃さないでほしいというポイントや看護師に知ってほしいポイントがあれば教えてもらいたいです。

人工呼吸器・人工透析装置の勉強をする際のポイント

 医療機器のしくみや操作に関しては、現場に出てから習う場面も多いです。また、病態や治療に絡めて理解することも必要です。医療機器のしくみを勉強するためのポイントをCEさんに聞いてみました。

CEにヘルプを出す

 はじめてICUで働くナースにとっては、人工呼吸器や人工透析装置に関する専門的な知識が十分ではない場合があるかもしれません。同じ人工呼吸器でも、メーカーが違うと操作方法や特徴がまるで違います。それに、勉強しようと思っても、学生のころにもっていた教科書だけではカバーしきれないことがあります。

 その場合は、現場のCEに教えてもらうのが効率的です。病院で採用されている医療機器はCEが保守管理を行っていることが大半なので、より専門的な知識を得ることができるでしょう。

 また、CEは医療機器メーカーとのつながりもあるので、CEを通して資料や情報をお願いしてもよいかもしれません。勉強会などを依頼してみるのもよいと思います。

まずはアラームの種類を覚えよう!

 機器が正常に動いているか、確認することも大事なポイントです。人工呼吸器では、各アラームは上限、下限の2種類に分かれます。
 例えば、気道内圧の上昇や低下、呼吸数や換気量の上昇や低下などが起こった際に鳴るよう設定されています。このアラームが適切に設定されているかが重要です。

 私が勤める職場の目安としては、各値の実測値に対して上限アラームが×1.5、下限アラームが×0.8のように設定されています(参考資料によって差があります)。例えば、分時換気量の実測値が6L/分だった場合、上限アラーム9L/分・下限アラーム4.8L/分のように設定するとちょうどよいかもしれません(患者さんの状態にもよります)。

 特に下限アラームは注意が必要です。人工呼吸器で一番致命的なトラブルは、人工呼吸器と患者さんの接続が予期せず外れてしまい、呼吸の補助ができなくなることです。患者さんの人工呼吸器が外れた場合は気道内圧低下のアラームが、呼吸回数が減ってきている場合は分時換気量低下のアラームが鳴ります(図1)。

図1 人工呼吸器の下限アラームが鳴る原因

 ICUで行う人工透析では、さまざまな理由により血行動態が安定しない患者さんが多いと思います。透析装置のアラームに限って注意しておくべきことは、回路内圧です。回路内の入口圧(動脈圧)と返血圧(静脈圧)の圧力差を観察すると、透析膜の詰まり具合や脱血不良などを知ることができます(図2)。

図2 透析装置の観察ポイント

 予定外の膜詰まりや脱血不良による血液損傷を防ぎ、安定した透析治療を維持するために医師やCEがアラーム設定を行っています。

管理場面では、こんなところも気をつけよう

 人工呼吸器の緊急トラブル時、例えば、機器の故障や患者さんとの呼吸が合わないときには、医師の指示のもと手動換気(バッグバルブマスクなど)で換気して、その間に機器の交換や調整を行えば、大きな問題が発生することはありません。所属部署で緊急時の対策がどのようにされているか、あらかじめ確認しましょう。
 患者さんの状態は、フィジカルアセスメントや各種モニターで把握することが大切です。人工呼吸器からの情報だけでなく、あらゆる手段で患者さんの状態をみていくことが重要です。

 ICUでの透析といえば、慢性期の人工透析よりCHDF(持続緩徐式血液濾過透析)の出番のほうが多いと思います。CHDFは血行動態に影響を与えないように長い時間をかけて透析を行うので、血液凝固や感染のリスクが上がります。血液凝固が起こると静脈圧が上昇したり、静脈チャンバー内にコアグラ(coagulation:凝固血塊)が見えたりすることがあるので注意しておきましょう。

 感染は血液検査から読み取れると思いますが、ブラッドアクセスの刺入部も観察しておいてよいと思います。血液凝固や感染リスクのため、開始から24時間ほど経ったら、「そろそろ回路交換かな?」(施設の方針による)と考えておくとよいかもしれませんね。

1.厚生労働省:医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針 -医療安全管理者の質の向上のために-.
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/houkoku/dl/070330-2.pdf(2024.8.6アクセス)

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この記事は『エキスパートナース』2021年7月号連載を再構成したものです。
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