移行期の支援課題

体制を柔軟に見なおす

 療養生活の場を変更する大きなタイミングとして、人工呼吸器や経管栄養法の医療処置の導入があります。進行期でもありますが、病状が進行して障害が重度化していくなか、体制を見なおす必要が出てくる時期でもあるため、本書では移行期として示しています。

 この時期は、退院調整を担う看護師の役割が大変重要です。また、在宅看取りの意向がある場合は、神経難病では終末期、特に死亡直前の状態の予測が難しいことを十分に考慮した対応が必要となります。

この時期の支援課題
□症状の進行を予測した対応
□合併症の予防と対応
□精神的支援
□家族支援
□医療処置・治療法の理解
□コミュニケーション手段の対応
□生活の工夫
□療養の場の変更に伴うケア内容の確認
□緊急時の備えと対応

 現在も選択肢が豊富とはいえませんが、自宅以外でも在宅の扱いの施設や、ホスピスなど療養場所を選択することが可能です。安定して医療が提供され、希望に沿った生活ができるように、調整していくことが必要です。

維持・安定期の 支援課題

合併症に注意する

 病状は、進行期と維持・安定期を行ったり来たりしながら、進行していきます。治療・ケアの発展により予後が延長し、これまで生じにくいとされてきた症状も認めるようになってきました(図1)。
 症状についてモニタリングし、合併症の出現に注意する必要があります。

図1 ALS人工呼吸器装着者の 非運動症状・合併症の例

社会参加の機会を逃さない

 この時期には「映画を観に行く」「旅行に行く」「大学に行って講義を受ける」など、日常生活における少し特別なことを実施できます。また、安定しているからこそレスパイト入院を選択して、家族がそれぞれの時間をもてるようにする人もいます。

 看護師は、普段の会話などから、その人を知り、「どんなことに興味をもち、大切にしているか」「安定しているときに、どのようなことができるか」気に留めておき、可能な時期に実施できるよう支援することが大切です。
 安定しているときにこそ、病状が進行したときのコミュニケーション機器や福祉機器を体験したり、同じ疾患の人に会ったり、考えている施設を見学したりするのもよいでしょう。災害時訓練なども提案したい内容です。

生活の見なおしも行う

 病状が進行したときに「どう生きていきたいか」「どう生活したいか」について対話することも大切です。とはいえ、落ち着いているときは考えることも難しく、少し進行した時期のほうが話をしやすいこともあります。

 また、いつまでこの生活が続けられるのだろうかという不安や、日々対応に追われていた時期と比べると、少し余裕ができてきて、小さな疑問が蓄積し、支援者との関係性に疑問を生じることもあります。落ち着いているときこそ、患者さん・家族、支援者がゆっくりと話し合い、日ごろのモヤモヤを解決することも大切です。