ACP、事前指示(AD)、リビング・ウィル、DNARの違いと関係を紹介。「事前指示(AD)、リビング・ウィル、DNARがあれば、ACPは必要ない?」という疑問について解説します。
事前指示(AD)とは?
事前指示(advance directive:AD)には、代理意思決定者(患者本人が意思決定することが困難になった場合に患者さんの医療・ケアの方針を本人の代わりに決定する代理人)を指定する代理人指示と、人生の最終段階や救急医療の場面における、生命維持治療を含む医療行為の希望だけでなく、希望する療養環境や看取り場所、自分の死後に家族などの重要他者に望む内容を指示する内容的指示の2つの指示が含まれます。
DNARとは?
内容的指示は、基本的に指示書として文書に表されることを目的とされており、一般的にリビング・ウィルと呼ばれています。また、そのなかにdo not attempt resuscitation(DNAR)が位置しています(図1)1。
DNARは、日本臨床倫理学会で、「心肺蘇生術(Cardio Pulmonary Resuscitation:CPR)を実施しない
という患者さんの意思・事前指示に沿って医師が出すオーダーである」2と定義されている通り、CPRを行わないという本人または家族の希望に基づいて医師が出す指示です。DNAR指示はあくまでも、「救命の余地がない患者さんの心停止時にCPRをしない」という指示であり、通常の医療・看護・ケアには影響を与えないことを理解しておく必要があります³。
図1 事前指示(AD)、DNAR、ACPの関係図

しかし、日本中の多くの医療機関でDNAR指示が誤用されており、DNAR指示があるからと、日常的にCPR以外の多くの医療・看護・ケアが開始されなかったり、差し控えられたり、中止されている現実があります3 。DNAR指示が誤用されていないか、患者さんの意思が本当に尊重されているのか、どのような基準で判断しているのか、適切な意思決定のプロセスを踏むことが重要です。
ACPと事前指示(AD)の違いは?
ACPは、その文書作成に至るまでに、さまざまな人生の局面で繰り返し行われる話し合いのプロセスのことです1,2,4。ACPでは、患者さんの意思や希望だけでなく、書面に表すことが難しい、その人の価値観、人生観、選択の根拠や背景などを含めて、繰り返しの話し合いのプロセスのなかで、患者・家族・医療者で相互に理解し共有することを重要視しています。その結果、患者さんにかかわる関係者全員の相互理解と信頼関係が深まることも期待できます(図1)。
一方、ADは、患者さん1人で決めて記載することもできます。そのため、なぜ本人がその選択をしたのか、医療者や家族などの重要他者が、患者本人の判断の根拠や背景を汲み取ることが困難になります。
つまりACPとADは個々に独立したものではなく、ADはACPの一環として位置づけられます。ACPの話
し合いのプロセスの結果として、ADが作成されることが大切です。
ACPは必ず行う必要がある?
ACPは、患者さんの自律の尊重が原則とされており、患者さんが主体です。ACPの話題について、「今
はまだ考えたくない」と言われる患者さんや家族も少なからずいらっしゃいます。また看護師は、医療チームのなかで最も患者さんと身近にかかわることにより、患者さんの今後の身体状況の変化を予測するとともに、患者・家族の目標や希望を把握し、それらを実現できる生活を患者さんが送れるように必要なケアを判断し、提供するという役割を担っています。
ACPを「必ず行わないといけない」ものとして業務的に考えるのではなく、現在の患者さんの状況と今後の見通しをアセスメントし、患者さんにとって何が最善かを一緒に考えるためにはどうすべきか、という観点から、患者・家族とのACPの話し合いの意義を理解し、慎重に進める必要があります。
ACPの話し合いを通して、医療者は、患者さんに主体的に自身の今後について考え、目標や希望を表現してもらえるように努めます。ACPは、患者さんがその人らしく最期まで人生を全うできるよう支援を提供するために必要な、患者・家族と医療者でともに話し合う共同作業であるという意識をもち、話し合いを提案することが重要です。病院に入院中の患者さんで特にACPの話し合いを考慮すべき人は、下記4に示すような患者さんです。
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