「脳」と「麻痺」の基本と応用について解説!今回は麻痺のある患者さんに行う体位変換・ポジショニングについて紹介します。
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ポジショニングは、患者さんの状態に合わせて体位や姿勢を工夫することです。適切なポジショニングによって、術後合併症を予防する、苦痛を緩和するなどの目的があります。
脳血管障害のある患者さんは、麻痺や感覚障害、また高次脳機能障害によって自ら体位を調整することができない人、あるいは姿勢を維持することが難しい人がいます。そのような患者さんには、どんな視点をもって、何に気をつけてポジショニングを行えばよいのでしょうか?
不適切なポジショニングは拘縮につながる
例えば右半身に麻痺がある患者さんは、車椅子に乗車していると右側に傾いてしまいます。これは、感覚が障害されているために起こることです。
また、健側である左半身に力が入り、抵抗するような行動(プッシャー症状、図1)をとる場合もあります。患者さんが傾いているので正中へ戻そうとすると、患者さんが強い力で押し返してくることはありませんか? これは、正中に戻そうとすることに抵抗しているような状態です。これらの症状がある患者さんに対して、適正な姿勢、つまりポジショニングが適切にとれないと、拘縮を助長させたり、痛みの原因になったりします。
図1 プッシャー症状の患者さん

適切なポジショニングは身体認知の向上につながる
脳血管疾患領域でのポジショニングは、拘縮のみならず、身体認知を向上させることが期待されます。病棟にいると、術後に頸部のポジショニングが悪いことで頸部が屈曲してしまい、いざ食事をするときにうまく口に食事を運べないことを経験します。
ポジショニングという行為は、すぐに効果が現れるものではありません。しかし、患者さんの生活を考えると、適切に行わないことでさまざまな支障をきたすことがあるのです。
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