川嶋みどり 看護の羅針盤 第89回

　20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 （ライフサポート社、2020年）。　

　この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

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　他人の経験であっても、印象に残るようなものは、その場面をイメージしながら聞くことにしている。自分で経験する頻度は限られているが、看護という共通の場での自分以外の看護師の経験を共有することで、多くの実践体験を得ることができるのである。

　大切なことは、単なる事象だけではなく、その底にある客観的法則性は何かを意識して語り、聞くことである。それが 1 回限りの経験であると思えるような時でも、それに仮のラベルをつけておくことにより、次に似通った経験に出会った時、「あの時のあの経験（事例）と共通である」「あの事例とはここが違う」と意識できる。

（出典：『看護の技術と教育 看護の時代3』126ページ、勁草書房）