水分出納(in-out)にかかわるエビデンスを紹介。高齢者における脱水症の診断、CVP値と輸液反応性の関係、サードスペースについて解説します。
高齢者の脱水症の診断では尿比重、色、pHは精度が低い
超高齢社会を迎え、患者の年齢層も高齢化しています。“患者の脱水症”を診断する際、高齢者においては尿比重、色およびpHともに精度が低いため、注意が必要です1。
Hooperらにより報告された結果1によると、ケア住宅や養護施設、自宅に住む65歳以上の男女383名に対して血清浸透圧値を調査し、同時に採尿を行って比較したところ、「血清浸透圧値」と、「尿の色」「混濁性」「比重」「浸透圧」「体積」「尿糖」「pH」のいずれもが相関しませんでした。そのため、尿検査は高齢者の脱水の正確な診断にとって活用性が低く、脱水の指標として用いるべきではないと結論づけられています。
また、私たちが在宅自立高齢者222名に実施した研究結果2でも、血清浸透圧値とBUN/Cr比に相関関係が見られないことが明らかにされています。
この理由として両研究ともに、加齢による腎機能の低下が尿の濃縮能力に障害をおよぼすために、各項目が脱水症の診断に適していなくなっていると考察されています。
CVP(中心静脈圧)値を見ても輸液反応性は予測できない
術中 ・ 術後の輸液投与において、現状、患者さん個々の適切なCVP(中心静脈圧)値を設定して、そこからぶれたときに“輸液をしぼるか”“負荷するか”を判断している施設も多いと思います。
しかし、体液の状態の評価に基づき“現時点で輸液をしたらよいかどうか”を予測することは、CVP値では不可能であることが明らかになっています。
Marikらにより示されたシステマティックレビュー3によれば、24の研究を通じてICU入室中の患者(合計803例)を検討した結果、CVP値は循環血漿量を反映しておらず、輸液反応性を予測する指標にはならないことが述べられています。なおこれらの研究では、循環血漿量の計測方法として、放射性元素や色素が用いられています。
これらのことから現在では、循環血液量の計測法としては経食道的なドップラーエコー法や、パルス式色素希釈法の原理を用いたDDGアナライザ(DDG-3000、日本光電工業株式会社)、および動脈圧ラインを活用したフロートラックセンサー(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)などが用いられています。
さらに2016年2月より、連続的に「血圧」「心拍出量」「1回拍出量」「1回拍出量変化」などのパラメータを測定する非侵襲の血行動態モニタリングシステムである「クリアサイトシステム」(図1)が、わが国でも販売されています。これは手指(人差し指、中指、薬指のいずれか)に専用のクリアサイ
トフィンガーカフを装着し、指動脈圧波形を変換することで上腕動脈圧波形に再構築して、連続的に血圧および心拍出量などを測定するシステムです。
図1 血行動態モニタリング装置

クリアサイトシステム(画像提供:日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)
サードスペースは存在しない
生体に手術や外傷などの侵襲に伴うストレスがかかると、体液が出血した量以上に減っていることが知られていました。このとき、細胞外液のうち血漿を「ファーストスペース」、組織間液を「セカンドスペース」と呼称して、新たにできたスペースを「サードスペース」と呼ぶようになりました。そして、ストレスによって体液はサードスペースへ逃げていくために大量の輸液をしなければならないと考えられていました。
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