看護師の特定行為の1つに「脱水症状に対する輸液による補正」があります。脱水を判断するための観察ポイント、エコーによるアセスメント方法などを紹介します。
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in-outに関連する「特定行為」
現在、高齢者の割合が増加しており、今後もさらにこの人口構造の変化は進みます。これは医療需要が増えることを意味しています。それに合わせ医師・看護師をはじめとする医療提供者の増員は検討されていますが、医療需要者数の増加率に対して追いつく数値ではありません。
そこで、厚生労働省は、“指定の研修(特定行為研修)を受け”“手順書をもとにすれば”看護師が自律的に判断し医療を提供できるような制度を設け、それに基づき2015年10月に保健師助産師看護師法第37条の2が改正されました1。
該当の特定行為区分は「21区分38行為」がありますが、そのなかの1つに『脱水症状に対する輸液による補正』があります。つまり簡単に言うと、特定行為研修を受けた看護師が手順書に従って行えば、看護師の判断で輸液補正を行うことができるということです。
脱水・溢水の判断と介入
通常、看護師が脱水と判断する材料としては、脱水を示唆するようなバイタルサイン、尿量の減少、尿比重、口渇、皮膚・粘膜の乾燥、CRT(capillary refilling time)等の身体所見と、BUN/Cr比等の採血検査を組み合わせてアセスメントし、医師に報告し、点滴の指示を受けるかと思います。
特定行為研修を受けた看護師が特定行為として判断するときは、これらの観察も当然行いますが、もう1つ大きな判断材料として超音波画像診断装置(エコー)を使用します。脱水・溢水に関連してエコーでわかることは、下大静脈径(inferior vena cava、IVC)を測定して血管内ボリュームを可視化することです(図1)。また推定値ではありますが、それに基づき中心静脈圧(centeral venous pressure、CVP)も推定できます(表1)2。エコーは患者にとっては痛みやX線撮影のような被曝もなく、無侵襲の検査で、定量的な所見として用いることができます。
図1 超音波画像診断装置(エコー)を用いた計測により脱水・溢水の程度をアセスメントする

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