透析患者の急変徴候を解説。心不全、出血、不整脈、不均衡症候群、ショック・肺水腫の原因や予防、早期発見・対応について、看護師が押さえておきたいポイントをまとめています。
- ●透析患者で注意すべき急変徴候
●心不全の原因、早期発見・対処・予防のポイント
●出血の原因、早期発見・対処・予防のポイント
●不整脈の原因、早期発見・対処・予防のポイント
●不均衡症候群の原因・早期発見・対処・予防のポイント
●ショック、肺水腫の原因・早期発見・対処・予防のポイント
透析患者で注意すべき急変徴候
2023年時点での透析導入患者の平均年齢は71.59歳1であり、加齢により身体機能が低下し、複数の疾患を合併していることが多いです。
長期透析患者は、非生理的な左室に対する容量負荷が繰り返されることや、弁の石灰化や尿毒症自体による心筋障害や動脈硬化から心筋虚血状態などが起こっており、心機能低下により心不全や不整脈が生じやすくなります。
透析は3~5時間の短時間で身体に蓄積された老廃物や水分が一気に除去されるため、身体内の平衡状態のバランスが崩れ、不均衡症候群が生じやすくなります。透析で抗凝固薬を使用することから出血のリスクも高いです。周術期では血圧低下によるショック、肺水腫が起こりえます。急変が起こりやすい順に示します。
●呼吸困難
●血圧上昇
●浮腫の増悪
●湿性咳嗽(しつせいがいそう)
⇒透析患者の死亡原因につながりやすい心不全を疑おう!
心不全の原因とは?
透析患者に起こる心不全の多くの原因は、体液量の貯留による容量依存性のうっ血性心不全です。塩分・水分の過剰摂取による大幅な体重増加や、腎性貧血や内シャントに伴う容量負荷なども原因となります。
透析患者の死因の第2位が心不全であり、全体の20.4%を占めています1。心不全の予防と治療は重要です。
心不全の早期発見・対処のポイント
①観察
心不全が軽度の場合は、労作時の呼吸困難があり、重症化に伴い、安静時あるいは夜間発作性の呼吸困難、起座呼吸が出現します。また、血圧の上昇、浮腫の増悪、湿性咳嗽などの出現がないかを観察します。
また、内シャントを作製すると血流量が増加し、心負荷が増加することで心不全を合併する可能性もあります。造設後~1週間程度は心不全の出現に注意します。
②心不全徴候への治療・ケア
心不全の徴候に対しては、緊急的に透析が必要でない場合、医師の指示のもと、利尿薬などの薬物投与や(ループ利尿薬が第1選択薬)、酸素投与も行います。
安楽な体位として、座位・半座位をとってもらいます。これらの姿勢は、横隔膜が下がることで呼吸面積が広くなり、換気量が増加し呼吸しやすくなります。また、下半身からの静脈環流が減少し、肺血流量や心拍出量が減少して呼吸が楽になります。
心不全の予防・予測のポイント
発症や重症化を防ぐため、塩分・水分制限を行います。水分量は、1日でどれくらい飲水したのかを把握できるように、記録することが大切です。
適正な体重管理として、毎日体重測定を行い、増加量に注意します。増加量のめやすとして、透析間が中1日でドライウェイトの3%、中2日で5%以内が理想とされています。また、血圧の管理を行うことも重要です。貧血は心拍出量を増加させ心不全の原因となるので、エリスロポエチン製剤を用います。
●胃の痛み、嘔気
●運動麻痺
●構音障害
●知覚障害
●意識障害
⇒消化管出血・脳出血につながる出血を疑おう!
出血の原因とは?
血液は異物と接触したときに固まる性質があります。透析では血液が体外に出てから体内に戻るまで回路やダイアライザーなどの器具と接触しており、血液が固まりやすい状態にあります。そのために凝固を防ぐため、ヘパリンなどの抗凝固薬を使用することから、透析患者は出血しやすい状態にあります。
入院中に起こりやすい疾患として、次の2つがあります。
①消化管出血
動脈硬化や二次性副甲状腺機能亢進症に伴う血管の石灰化による虚血性胃炎、肉体的・精神的ストレス、多種類の薬剤服用などによる胃粘膜の防御因子の低下や、胃粘膜での血流量の低下などが加わり、びらん・潰瘍ができやすい状態にあります。
②脳出血
透析患者は動脈硬化を起こしていることも多く、動脈硬化に陥った血管が高血圧によって破綻し、脳出血を起こします。
出血の早期発見・対処のポイント
①消化管出血の観察と治療
胃部不快感や腹痛、食欲不振などの消化器症状の観察や、コーヒー残渣様吐物、タール便の有無について確認します。また、血圧低下、頻脈、動悸、顔面・眼瞼結膜の蒼白などの貧血症状の観察を行います。
吐血や下血など活動性の出血が起こると血圧低下をきたすので、点滴で循環血液量を増やして血圧低下を予防します。貧血の状態によっては、輸血が必要となります。カリウム値が高い場合は、カリウム除去フィルターを使用するか、透析を行いながら輸血します。絶飲食とし、内視鏡検査などで出血源の検索を行い、治療を行います。
確実に止血が確認できるまでは、透析時に使用する抗凝固薬は、“半減期が短く”“体内での抗凝固作用の弱い”メシル酸ナファモスタット(フサン®など)を使用します。
②脳出血の観察と治療
脳出血は被殻出血の頻度が高く、透析中と透析後6時間以内に発症することが多いです。
症状の例を表1に示します。出血部位より症状の出現は異なりますが、出血量の増加に伴い、症状が徐々に進行し、予後が不良になります。
状態が安定するまではメシル酸ナファモスタットを使用し、透析については頭蓋内圧の上昇を抑えられる腹膜透析や持続血液透析濾過に変更することが望ましいとされます。
表1 透析に伴って疑いたい脳出血の徴候
●透析中と、透析後6時間以内に起こりやすい
● 出血量の増加により、症状は徐々に進行する●頭痛、嘔吐⇒頭蓋内圧亢進?
●手足に力が入らない⇒運動麻痺?
●手足の感覚が鈍い⇒知覚障害?
●話しかけても反応がない⇒意識障害?
●言葉がうまく話せない⇒構音障害?
●ふだんできる動作ができない⇒失行?
●目の見え方がおかしい⇒視野異常?
出血の予防・予測のポイント
①消化管出血の予防
定期的な検査での早期発見が重要です。
また透析患者ではリン吸着薬を内服していることが多いですが、消化器症状につながりやすくなります。できるだけ服薬量を減らすため、高カリウム血症や高リン血症を食事で調整できるように指導します。
また、リン吸着薬の多用による便秘が直腸潰瘍の原因となることがあるので、日ごろからリンのコントロールと排便コントロールを行うことが重要です。
②脳出血の予防
透析患者の脳血管障害の原因となる高血圧は、水分の貯留によるものがほとんどなので、日ごろからの体重管理と血圧コントロールが大切です。
●心電図異常
●血圧低下
●胸痛
●呼吸困難
⇒心臓突然死につながる不整脈を疑おう!
不整脈の原因とは?
透析患者はほとんどが冠動脈疾患、心肥大、虚血性心疾患などの基礎疾患をもっています。それに加えて、透析に伴う体液量、電解質、酸塩基平衡の急激な変化により、不整脈につながると考えられます。
不整脈の早期発見・対処のポイントは?
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