7月4日、日本老年医学会は『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025』を刊行しました¹。2015年の刊行から約10年ぶりの改訂で、大幅にアップデートされています。

リスクの高い薬物・安全性の高い薬物で、近年の傾向を反映

 本ガイドラインは、薬物有害事象の頻度が高く重症例も多い高齢者(75歳以上、75歳未満のフレイルのある患者など)の安全性を高める目的で作成されています。

 今回の改訂では、本ガイドラインの特徴とされる高齢者に対して「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」や「開始を考慮するべき薬物のリスト」の見直しが行われました()¹。

表 薬物リストのアップデートについて

「特に慎重な投与を要する薬物」に追加された薬剤
糖尿病治療薬
・GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬
⇒フレイルやサルコペニアの患者では体重減少に注意しつつ、投与の可否に慎重な判断が必要なため

「開始を考慮するべき薬物」に追加された薬剤
●慢性閉塞性肺疾患治療薬
・吸入長時間作用性抗コリン薬(LAMA)
・長時間作用性β₂刺激薬(LABA)
●β₃受容体作動薬
●ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬
⇒ 優先度の関係でアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が削除。また、「関節リウマチ」の章の削除の関係で、抗リウマチ薬(DMARDs)も削除された

(文献1を参考に作成)

 全体的な変更としては、診療での具体的な注意点についてエビデンスに基づいて解説がなされているほか、「日本版抗コリン薬リスクスケール」の記載やBeers基準・STOPP/STARTを参考とした評価、高齢者総合機能評価(CGA)の重要性に関する記載の追加等が行われました¹。

1.日本老年医学会 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン作成委員会編:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025.メジカルビュー社,東京,2025.