がん薬物療法開始前には、患者の理解を確認することが大切です。病状や治療目的、レジメンの把握など、看護師がおさえておきたい確認事項を紹介! 『がん専門病院に学ぶ 簡単にわかる・現場で役立つ がん薬物療法看護 はじめてBOOK』の試し読み記事をお届けします。

コレだけおさえよう!

●「病状」「がん薬物療法の目的」「がん薬物療法に対するイメージ」「レジメン」について患者の理解を確認する。
●患者の理解の確認は、治療の選択や生活の調整に重要である。

病状の理解の確認

 患者ががん薬物療法を始める前に病状をどのように理解しているかは、患者が治療を完遂するために重要です。

 患者は、がんと診断されるまでにさまざまな検査を受けます。その検査結果から、 図1に挙げるポイントを患者自身が理解したうえで治療選択が行えているか確認する必要があります。

 がん薬物療法開始前は、診断がついて間もなかったり、再発が明らかになったりと、患者にとっては衝撃が大きく混乱していることが多い時期です。患者は、がんの診断や再発に気持ちがついていかず、頭が真っ白になったり、現実感が伴わなかったりすることで、医師からの説明を十分に理解できない場合もあります。

 看護師はこのような状況をふまえながら、患者が自身の病状と治療法の説明をどのくらい理解できたか確認することが重要です。必要であれば、医師に再度説明してもらうことも検討します。

図1 病状の理解で確認したいポイント
病状の理解で確認したいポイントを説明した図

がん薬物療法を行う目的の確認

 近年、医学の進歩によって、がん薬物療法はさまざまな使い方をされています。根治目的、術前補助療法(ネオアジュバント)、術後補助療法(アジュバント)、生存期間の延長、症状緩和など、目的によってがん薬物療法の意味合いが異なります。

 がん薬物療法の目的によって、がん薬物療法が行われる期間も異なります。患者自身が納得したうえで、前向きに自分の治療として取り組むためにも、自身に行われるがん薬物療法の目的を理解しておくことは重要です。

がん薬物療法に対するイメージの確認

 現代は、多種多様な情報をさまざまなツールで得ることができる時代となりました。そのため、テレビやドラマの影響もあり、がん薬物療法は“つらい”イメージが強く、過剰に不安を感じている患者や家族が多くいます。また、それぞれの視点で執筆された本やインターネットの情報、SNS、ブログなどの情報があふれるなかで、患者が正しい情報を取捨選択するのは非常に難しくなっています。

 がん薬物療法は“つらい”“やらないほうがいいと聞いた”といったイメージの先行や、過去のつらい治療経験から、治療選択から除外される場合があります。

 がん薬物療法には、確かに必ず副作用があります。しかし、がん薬物療法の副作用は使用する薬剤によって特徴的な副作用が異なることや、個人差があることを十分理解していない場合があります。さまざまな情報にふれることで、患者の不安だけが増大している可能性があることを、理解しておかなければいけません。

 患者ががん薬物療法に対しイメージしている内容が、実際に行われるがん薬物療法と合致しているか、実際に予想される副作用や治療効果に誤解が生じていないか、対処方法があることを知っているかなど、患者の理解内容を確認することは非常に重要です。

ナースの視点

●副作用に向き合わなければならないのは患者自身です。患者が適切に支持療法を受け、副作用を最小限に抑えるために、患者のセルフケア能力を引き出す必要があります。

●治療を完遂するには、正しい情報を入手し、副作用対策の現状を理解し、「がん薬物療法を行う」という患者自身の意思のもと、主体的に治療が受けられるようサポートしましょう。

レジメンの理解の確認

 がん薬物療法のレジメンを理解することは、副作用対策や通院頻度にかかわる生活の調整において非常に重要となります。

①投与薬剤の種類と量

 がん薬物療法は、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、内分泌(ホルモン)療法薬、免疫チェックポイント阻害薬などを用いて、がん細胞の浸潤・増殖・転移を抑制する治療の総称です。

 近年、新薬開発の進歩は目覚ましく、治療選択肢が増える一方で、多彩な副作用管理が必要となります。

 がん薬物療法は、投与する薬剤と量によって副作用が異なります。各レジメンによって特徴的な副作用があるため、どのような副作用が出やすいのか、副作用対策によって副作用の軽減は期待できるのか検討します。

 改善が難しい副作用がある場合は、患者の生活背景を視野に入れ、どのような生活の支障が出るのか、自分で主体的に行わなければならないセルフケアにはどのようなことがあるかを患者自身が理解し、セルフケアを行っていく必要があります。

 「副作用の発症時期」だけではなく、「症状が改善していく時期」のめやすを具体的に説明することで、患者の安心につながるとともに、具体的な生活のイメージをもつことができます。

ナースの視点

●レジメンごとの特徴的な副作用について、その患者に当てはめて考えましょう。

例①「末梢神経障害」が出現する薬剤:投与を重ねるごとに副作用が強くなるため、家事や日常生活への支障、細かい作業を行う仕事に就いている人では仕事にも支障をきたします。

例②「性機能障害」を生じる可能性がある薬剤:今後、挙児希望がある場合は、そのリスクを理解し、精子・卵巣保存(実施する猶予があるか)を考えなければいけない場合があります。

②投与スケジュール

 がん薬物療法は、使用する薬剤やレジメンによって投与時間、投与順序、投与スケジュールが決まっています。レジメンによって、病院の滞在時間と通院頻度が異なります。入院で行う場合や通院で行う場合、1サイクル目だけ入院で行う場合など、さまざまです。

 例えば、レジメンのなかには、外来でがん薬物療法を週1回受けなければいけないものがあります。仕事がある人にとっては、治療を受けるために毎週仕事を休むなどの調整が必要となる場合があります。また、薬剤投与時間によって、1日休まなければいけないのか、半日や数時間でよいのかが変わってきます。

 投与スケジュールによって「患者の生活」にどのような調整が必要になるのか、予定されたスケジュールによって「がん薬物療法を受ける意思決定」に影響するのかを把握し、社会的な制度利用(傷病休暇など)で患者の負担軽減となるのであれば、必要な情報提供を行います。

ナースの視点

●「1回の治療にどのくらいの時間がかかるのか」、また、それが「どのくらいの期間で実施されるのか」などによって、仕事をどのように調整するか変わる場合があります。

●患者の生活背景を視野に入れ、治療を開始する前にあらかじめ投与スケジュールの情報を提供することが重要です。

1)佐々木常雄監修,下山達,三浦里織編:がん薬物療法看護ベスト・プラクティス 第3版.照林社,東京,2020.
2)国立がん研究センター内科レジデント編:がん診療レジデントマニュアル 第9版.医学書院,東京,2022.

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がん薬物療法看護はじめてBOOK

がん専門病院に学ぶ 簡単にわかる・現場で役立つ 
がん薬物療法看護 はじめてBOOK

鈴木美穂、山口正和、羽田 忍 編著
B5・224ページ
定価:2,970円(税込)
照林社

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