一般病棟でも注意しておきたいPICS(集中治療後症候群)についてわかりやすく解説。今回のテーマは、認知機能障害の予防策です。ICUの環境整備やせん妄予防などを紹介しています。
日常生活とは異なる環境がもたらすさまざまな影響
ご存じのとおり、集中治療室(ICU)は日常生活とかけ離れたところにあります。それは、見慣れない医療機器に囲まれるのみならず、プライバシーのないベッド、多くのメディカルスタッフが治療方針などの話し合いや雑談をし、そして、痛みを伴う治療や検査が繰り返されます。
自分の心拍数が聞こえ、アラームがあちこちから聞こえます。ときには怒っている声も。これは夜になっても変わらず、消灯はされてもPHSの呼び出し音などが聞こえ、とてもよく眠れる環境ではありません。
このようなICUの環境は、患者さんの認知機能や精神状態に影響を与えそうなことは、「感覚的には」納得がいくと思いますが、現在のところ、ICUの環境と、長期にわたる認知機能障害が直接的に関連するという証拠はありません。よって、環境を整えることでPICSの1つである認知機能障害が予防できるかといわれれば、それはまだわかっていないとしか言いようがないのも事実です。
せん妄予防がPICS予防につながる
しかし、ICUでのせん妄は、長期にわたる認知機能障害と関連していることはわかっています。せん妄になった患者さんは、長期にわたる認知機能障害をもつ可能性が高いという調査結果1や、せん妄の日数が長いほど、認知機能障害の程度が高いという報告2もあります。
まだ十分なエビデンスがあるとはいえませんが、せん妄は睡眠と関連しているとされていますし3、ICUの環境(例えば光が入りやすい、個室である)はせん妄期間と関連するとされています4。
すなわち、環境を整えることで、せん妄発症やせん妄の期間を減少させ、その結果、長期にわたる認知機能障害を予防することができるかもしれません。具体的には、
・昼夜がはっきりするような環境にする
・夜間は環境音を最小限にする(例えば、PHSの音なども小さくするかマナーモードにする)
などです。
また、ある単一施設の研究では、面会時間を1日4.5時間の制限から1日12時間にしたところ、せん妄発生率とせん妄日数は有意に減少したと報告されています5。よって、面会時間を拡大し面会時間の制限を少なくすることも有用かもしれませんね。
最近では、ICUの患者さんが耳栓を使用することで、せん妄が少なくなるのではないかといわれています。このテーマに関しては、すでにいくつかの無作為化比較試験が行われ、また、メタ分析も行われた結果、せん妄の発生率を減少させることが明らかになっています6。
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